遠ざかる背中を追いかけることが出来ずに<040>
「な……っ良紀、おまえ一体何なんだよ……」
この人はあなたごときが触れていい人ではない、と振り払われた手。
かけられた声は忘れもしない実弟の冷めた響き。
後に続いたのは驚愕と動揺だけの俺の情けない声。
肝心の本人は、さっきまで俺が伸ばした手に触れていた頬に手を添えていた。
落ちる影の仕業でその表情は見えない。
「その名を口にするな」
「私は大丈夫だから……ね、行こう?レギュラス。」
俺に向けられた杖を降ろすように促した声。
張り詰めたこの場にそぐわない声だったが、舌打ちをしながらもレギュラスは大人しく杖を下げて踵を返した。
去り際に、貴女は優しすぎるとまであの弟に言わしめるこの少女は何者なのか。
「私は私……ゴメン、これ以上は言えないや。――でもシリウスが嫌いじゃないってことだけは確かだからね」
どこかに淋しさを漂わせ、それでも笑みを浮かべる良紀は今、どんな気持ちに溺れているのだろう。
040:遠ざかる背中を追いかけることが出来ずに
「こんなところにいたのか」
「知ってる場所だったから、つい…。」
「……用事は済んだ。戻るぞ。」
「あ、ちょっとだけ待ってください」
パタパタと近寄ってくる足音と暗くなった視界。
そして、耳元で囁かれた言葉が俺の記憶の最後だった。
「楽しかったよ。――おやすみ」
御題提供:追憶の苑様【切情100題】
シリウス気絶させられてやんの(^ω^)←
ちなみに、ここで良紀ちゃんがパッドフットを気絶させてないとヴォル卿がアバダケタブラ使っちゃってたよというひそかな話。
どこまでも見せ場がなかったな!←
ついでに、レギュラスを出したのは個人的な趣味。コンプレックスの塊って良いじゃないか!←
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