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捩れたままの想い <048>

「ついてこい」

端的かつ明確に発されたはずの言葉を理解できなかった。理由は簡単。
『誰に』向けた言葉なのか、『何処に』なのかが欠落しているから。

何言ってるんだろう、ヴォルデモートさんは

失礼な考えが頭を過ぎったのがバレたのか無言で引っ張られる腕。
バランスを崩して歩けなくなっていたけど問題なかった。引きずられてしまえばどうだろうと同じだ。


そうか
今、私しか部屋にいなかったな。

……ヴォルデモートさんの溜息が聞こえてきそうだ。



※※※


「わかったな」
「……記憶しました」

一つ、絡まれた場合無視をすること。させるつもりはないそうだが。
二つ、物には不用意に手を触れないこと。何が起きるかわからない。
三つ、気を抜かないこと。


どうしてそんな危ないだろうとこに私を連れて来たんだ。真意が見えない。

けど、そんな条件を出すくらいだったら一応心配されてるのかな、なんて思ってみたり。
きっと、気を使ってくれたんだろう。……多分。
ずぅっと部屋に篭りっぱなしだったことだし。

ヴォルデモートさんにお世話になってるこの間。わかったこと、見つけたことがいくつかある。
何気にヴォルデモートさんは優しいのだ。普段の言動からも、時々醸される威圧的な雰囲気からも想像つかないけれど。こうして度々私を気にかけてくれる。(ちなみに本当にさりげないから気付くのは、たいていが後に思い出したとき。ごめんなさい。)

今日はせっかくタイムリーに気付けたのだから言いそびれてた御礼の一言でも言ってみようか。

礼の心は欠かしちゃいけない。

(ありがとうございます、なんて)


「ヴォルデモートさ――


――……あれ?」




ごめんなさい、ヴォルデモートさん。
さっそく迷子になりました。
ということで、何処にいらっしゃいますか?
早く会いたいです。

怖いです、ココ。



※※※



「ったく……良紀め……」

やはり連れてくるべきではなかったか。
しっかりしているかと思えばコレだ。

大方、考え込みながら歩いていて気付いたら……というオチなのだろうが。そういう点に関しては変わっていてほしかった。
残すべき長所と改善すべき短所くらい分けてほしいものだ。
まぁ、そういったいろいろなものでちょうどバランスが取れているのだろうけど。

「ノクターンの中……だと良いが」

今の私ではダイアゴンには足を入れられない…。

漆黒のローブが翻った後には溜め息だけが残った


※※※


雰囲気、変わった…?

先程まで申し訳程度にぶら下がっていた看板達ですら今は見当たらない。

「おい、迷い込んだのか?」

見知らぬ土地、かつ怪しい人々の姿に消耗しきった頭が、まさに不安に飲み込まれようとしているときだった。

夜を思わせる髪にユニコーンの血の瞳。

レギュラスにそっくりな――



「“居候させてもらってるやつに連れられて来て、忠告された直後に逸れた”と。
馬鹿か、お前。」
「……落ち込んでるんだよ、これでも」
「その程度、見りゃわかる」
「(こいつ……!)」

事情を話していてわかったことがいくつか。
少年の名はシリウス=ブラック。姓で呼ばれるくらいなら“小鬼を抱き枕にするほうがマシ”なんだそうだ。(ブラック君と試しに呼んでみたら絶対零度の瞳に睨まれた)
そして多分、レギュラスのお兄さん。

「元いた場所に戻るっつっても、そこが何処かわからないんじゃあな……」

シリウス曰く、ここは事を企む人間には打ってつけな場所だけど私みたいなのには似合わない場所らしい。治安が良いとはお世辞にも言えなく、所謂お尋ね者なんて呼ばれる人間の御用達でもある、とも。
ちなみに彼は趣味に使う道具漁りに来ていたんだそうだ。

「ねぇ……」

ダイアゴンか…?いや、ボージンアンドバークスぐらいなら来るやつもいるかも……。けど普通こんなの連れてくるか…?やっぱり用事ってのがわかんねぇと……

ぶつぶつと何かの呪文のように推理を展開するシリウスは良紀の言葉に気付かない。

「ねぇシリウス!」
「……ンだよ、でかい声出すな」
「だってシリウス、聞こえてないんだもん」
「あーはいはい、悪かった。……で、何だ?」
「えっと……足が痛いので休みたいんだけど…」
「は?」
「仕方ないじゃん!こんなに歩いたの久々なんだから!」

一瞬、目を見開いた後
堪え切れず笑い出したシリウスに腹が立つ。

「わりーわりー、何処の箱入り娘だよ……ククッ」

いい加減黙れよと睨んでも、効果があるどころか助長してしまう結果に終わった。

「まぁ……箱入りってのはあながち間違ってはいないけど…」
「お前が!?箱入り!」

あげく、吹き出す始末だ。

「あーもういいです。シリウスはシリウスの買い物の続きしに行ったら?私の人捜しのせいで途中になってたでしょ?」
「おいそんな拗ねんなって!
…わかった、バタービール奢ってやる!」
「バタービール?」
「知らないか?ならなおさらだな。あれを飲まないなんて人生を半分以上無駄にしてる」
「飲んだことはある…けど……」
「けど…?」
「ううん、なんでもない」

いつのまにか町並みは明るくなっていて、あちこちにポップな看板が立っていたり私ぐらいの年格好の子が歩いていたり、まさにさっきまでとは正反対。
多くなった人影にシリウスの姿が紛れる。私は、見失わないようにと背伸びを駆使して後を追う。
ふと足を止めてちょいちょいと手招きをしているシリウスに、今のうちに追い付いてしまおうと軽く走ったりもした。
やっとのことで追い付くと同時に引っ張られる右手。

「逸れるなよ。この中で捜すなんて考えたくもない」

いないはずのリドルが見えた気がした。

「――うん」

けど、私の手を引くのは確かにシリウスで、







048:捩れたままの想い







あの時あなたの手を素直に取ってたら、今も一緒だったのかなぁ……リドル。

「バタービール2つ頼むわ」
「はは、坊主も隅に置けないねぇ
いっちょ前に彼女なんて連れて」
「ちげーよ!こいつの知り合い捜すの手伝ってたら疲れたとか言うから、優しいオレが…って、お前まで笑うなよ…」
「ごめっ……こういうのしばらくぶりだったから……っ」
「〜〜くそっ、笑うなら思いっきり笑え!」




―…―…―…

まさかのシリウス参入←
前に上げてた(これの次です)、シリウスとレギュラスが鉢合わせる話に続くイメージ(^ω^)←

*←→#

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