まぼろしばかり追いかけても<039>
「いつも思ってたんだけど、これって一体どういう仕組みになってるんだい?」
「魔法では基本的に自分の魔力だけを使う――それに対して陰陽道では五行の力を使うんだよ。ただしくは、陰陽五行をベースに自分の意志や力を呪符とかの媒介を通して乗せてやるんだけど…、」
「だから君が離れていてもこれらは動くんだね?」
「そんなところだけど……。うーん…ゴメン、上手く説明できないや。どうにも理屈っぽいことは苦手で……。ただ、この式神は永久に動く訳じゃないよ。本来の術式じゃなくて略式のものを使ったから存在としての本体が無くなれば動かなくなっちゃう。」
「じゃあ本式のやつなら止められないかぎり動き続けることが出来るってこと?」
「まぁ、略式でも充分に動かせるし、あまり力を使わずに済むから特に何があるということじゃなきゃこっち使っちゃうんだけどね。
本式のだとかなり力を使うし時間もかかるし酷い手間なんだよ。
そのかわり、本式のだと若干の術も使わせられるから……一長一短ってとこかな」
「ねぇ、良紀。少しでも良いから僕に教えてくれない?」
「……え?リドルが?」
「うん。知識と力を増やしておいて損は無いからね。」
「……呪詛の類は一切教えるつもりないよ。」
「わかってる。君はそういうの嫌いだって知ってるからね。」
「だって、ずるいでしょ?」
「そうかなぁ。簡単だし、安全じゃないか。」
「それでも嫌なの。」
「ふうん。ま、君のそういうとこ嫌いじゃ無いよ」
「………は?」
「良紀のそういう強い意志を持てるところが好きだって言ったんだよ。」
「……あっ…あのねぇ、」
「言っておくけど、お世辞は君には通じないって良紀が自分で証明して見せたんだからね。」
「ご…ゴギョウっていうのは……」
「顔、赤いよ」
「“木火土金水”から全ては成り立っているっていう思想から――――聞く気ある…?」
「ゴメン、ゴメン。続けて…?」
「……なんか釈然としないんだけど。」
「僕が悪かったって。ほら、もう笑わないから。」
「陰陽道関連の本なら捜せば見つかるでしょうから、どーぞ気が済むまで自学してください。」
「百聞は一見に如かずって言うだろう?」
「次期首席候補と名高いリドル君なら問題ありませんよ」
「――わかった。バタービールで手をうとう。君、飲んだこと無いって言ってたよね?」
「……っ物で釣られなんか…!」
「残念だなぁ、ホグズミートの穴場を沢山案内しようと思ったのに……。良紀と行きたかったけど、嫌って言われちゃ仕方がないし……」
「……」
「無理にとは言わないから気にしないで。ハロウィン期間限定の悪戯道具やお菓子が見られないのは少し、残念だけど。」
「……五行についての続きから」
「物分かりの良い友人で助かるよ」
039:まぼろしばかり追いかけても
今となっては夢の中の出来事。
一緒に行こうって――案内してくれるって言ったのに
ゴメンね、リドル。
もう会えないかもしれない
御題提供:追憶の苑様【切情100題】
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