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さよならの色なんて知らない<037>


「見舞いに来たのだが、良紀=九世の病室はどこか教えてもらえるだろうか?」

しばらく足が遠のいていたがいつまでも避け続けるつもりは元よりない。
…………こういうのはやめよう。

良紀に会いたくてしょうがない。ただそれだけの理由だ。
そのためにはたとえ拒まれても……いや、確実に拒まれるだろうからこそ、面と向かって謝るしかないと思う。


「少々お待ちください」

慣れた手つきでキーボードを叩く音が止まればすぐに、彼女に会える。
期待と緊張がカタカタとリズミカルに刻む音と一緒に膨らんでどうしようもない。
そのせいで、にやけそうになる頬を押さえ付けながら冷たい汗が背を伝う嫌な感覚を味わうという不思議体験の真っ只中だ。



「………あのぉ……………良いですか?」

「あ、あぁ、失礼。考え事に集中してしまっていた」

「はぁ……、それで九世様の病室なのですが、」



ついに、彼女に会える。

あの声を聞ける。

あの柔らかな髪に触れられる。





苦手な我慢もあと少し、だ。





037:さよならの色なんて知らない




「今朝退院なさってますよ」

「な……っ、彼女はまだそこまで回復してないだろう!?」

「申し訳ございませんが、受付の身であるため、退院された以上の詳細についてはわかりかねます。」




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