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この風に身を任せ全てを忘れてしまえたら<花鳥風月-3>(For:Booh)(4に関係)

「良紀ー」

「ああ、佐助。何?」

「トノがお呼びだよ」

「幸村が?なんでまた」

上田城を守り殿と呼ばれるようになってから、それなりの時間を経てきた。
しかし、一向にその呼び名に馴染むことは出来ない。

城主という大役を任されている者にもかかわらず、未だにそれなりの雰囲気というか威圧感のようなものが備わりきれてないことも影響しているのかもしれない。



「話でもあるんじゃない?近々戦も控えてることだし」

その答えに納得して、主であり幼き頃からの友の部屋へ足を向けた。






「つまり、竜の右目の足止めをすればいいんだね」

「……大丈夫か?」

「気にしなくて良いよ。幸村は私らを使ってなんぼなんだから」

「そうではなくてっ、良紀は…っその、伊達の……」

「何を言いたいのかわかんないよ。私は、個人である以前に、上田城主真田幸村の家臣であり駒であることを選んだ。その時から真田が、武田が、武将――九世良紀の全てなんだ。」

「違う!良紀は真田の武将であるまえに一人の人間であろう…!?」


自分の事じゃないのに、そんな辛そうな顔しないでよ。

私よりも沢山苦しんだりなんかしないで
幸村は親方様と真田家の頭首としての事だけ考えて、それらを最優先にすればいいの


「違うなんて言わないで。私は、それを支えに私を保っているのに、それまで否定されたらどうやって戦っていけば良いの?」


私みたいないくらでも替わりがきく者に心を砕いていたら幸村の心がもたなくなっちゃうよ?


「女子としての生き方に戻ることもできるではないか…ッッ」

「幸村や親方様さえ生きててくれれば良いと思っちゃいけないの?祈るだけじゃどうしようもない事ばかりの世で2人の盾になるには、ひたすら祈って待つことしかできない女子では無理なんだよ」





そうだ、戦うため、盾になるため刀をもった。
幼い心ながら、温かな貴方の笑顔を護りたいと思った。








「伊達殿と戦うことになるかもしれぬのだぞ!?」


「私じゃ勝つなんて到底不可能だけど、太刀を鈍らせることぐらいならできるよ。そうすればあとはどうにでもなるし、あの人の手で逝けるのだったら私にしては上等な最期になるでしょ?」











愛する人といえど乱世に生まれ落ちた以上、避けられはしないのだ。

武田が私の全てになったときから決まっていたことかもしれない。















『ゴメン、政宗。やっぱり武田が大切なんだ。』
















一方的に幸村の部屋を出た。





今感じている刺すような痛みは、冷たい空気によるものなのか、それとも心のずっと深いところから沸き上がるものなのか。


わかってるくせに認識したくなくて、落ち葉を運ぶ冬の風のせいにした。
































このに身を任せ全てを忘れてしまえたら

花鳥風月:3









相いれないものと知りながら、ただひたすらに恋い焦がれる気持ちを、害無く殺すには既に遅すぎた。


もとより、気付くべきではなかったのだ。

私も貴方も。












切り裂かれる心の悲鳴を聞きながら、今日もまた痕を刻む。





≪curtainfall...≫



ようやく本業のBASARA。
どこまでも悲恋。
ちなみに私のモットーは『夢主はオリキャラ』なので、一般的に夢小説やドリームと言うような夢のある内容ばかりじゃありません。(言い訳)
とにかく、この話では『家に翻弄される者達』を書きたかったんです……ッ
あと、太刀を鈍らせる=刀の錆になる=政宗に斬られる覚悟というか……
『いざという時って、恋人よりも幼なじみを優先してしまうんじゃないか』ってなことを考えてたら、こんなんなった。
けど、強がって、どちらかを犠牲にしたとしても、結果的に罪悪感・孤独感・無力感に窒息してしまうことに変わりはないんだろう、と。


(BOOHちゃんへの贈り物その3<全4>)


2008/01/18





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