香蘭学園
7
暑さで溶けかけのアイスを頬張り思わず笑顔が漏れる。久々に食べたのでおいしさは格別だ。
「昨日さぁ、帰っちゃうんだもん。俺、少し寂しかったんだぜ?」
「またまた、冗談いって!」
アイスを食べるのに夢中の藍に突然、絢斗がふざけた口調でいきなりき着いてきた。いつものことだと真に受ける事なく藍が退ける。
絢斗と同じ高校に通っていた時はこんな悪ふざけやじゃれ合うことも普通だった。
「ちょっと、アイス溶けるっ…離せっ…!」
「ああ、ゴメンゴメン。」
やっと離れてくれた時には溶けたアイスで手がベトベトだ。ザクザクとティシュで拭くがべとつきは落ちない。
「もう、手洗ってくる…!?」
「なぁ、男子校通ってるって言ったよな?」
藍が立ち上がると服の裾を絢斗につかまれた。
「だから何ッ!?」
「彼氏できたんだろ?」
それまで穏やかだった心拍数が心臓を直撃するような絢斗の一言で急に速くなる。
「…そんなこと…ない。」
いきなりの確信をつく疑問形ではない質問に躊躇う。
藍は声が裏返りそうなのを抑え平常心を装う為、視線を絢斗から背けた。
「じゃぁ、これは?」
絢斗の指差した場所はシャツの襟元から覗く薄くなった鬱血の跡。
夏休み直前に浬に付けられたものが今も身体のあちこちに残っていた。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!