香蘭学園
4
毎回同じような事ばかり、二度はない。
甘い言葉も、優しい態度も一晩だけの偽りを幾らでもはける。
処理をさせてもらったお礼として日狩もこのくらいは礼儀として心得ていた。
それは一晩だけの夢を淑女に与えるホストのようだ。
狡猾かつ、滑稽な自分を慰める様に日狩が薄く笑った。
『狡いよ。』
『最悪。』
朔夜がいたら言いそうな言葉の羅列がどこからともなく聞こえてくる。
ここには朔夜はいない。
幻聴に過ぎないのにリアルさが増幅してきた。
「日狩…くん?何、考え事してるの?」
「いや、何でもない。」
渋い表情をしていた日狩を心配してか、もしくは面白くないのか彼女が甘えたように日狩にもたれ掛かった。
「あ、わかった。私と付き合ってもいいかな、とか考えてくれたとか?」
「あ、あぁそんなとこ。」
検討違いも甚だしい。
ここまで勘違いされると呆れて何も言えなくなる。
あまり頭がよろしくないのか、一人舞い上がる彼女にその場だけは適当に話を合わせていた。
どうせ赤の他人。明日になれば忘れているに違いない。
「君は可愛いね。俺なんか勿体ないくらいだ。」
心にもない言葉を連ねればそれを真にして喜ぶ。
単純で簡単に堕ちる女の扱いは日狩にとって都合のいいものでしかなかった。
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