香蘭学園 5 ――明け方。 まだ日が昇りきらないうちに寮へと日狩が戻ると、目を真っ赤に充血させ、朔夜がソファーに座っていた。 「朔夜…。」 日狩は気まずい雰囲気を察知して苦笑いをする。 朔夜は毛布に包まり日狩を一瞥するなり押し黙ったまま。 センターテーブルには飲みかけのコーヒーカップが一つ、既に冷めきっている。 「…起きてたのか?寝ててよかったのに。」 「…。」 いつもとは違う雰囲気。今日は明らかに、朔夜の様子がおかしい。 「朔夜どうかした?」 日狩が朔夜の体に触れた瞬間、破裂音が部屋の中に響き渡った。 日狩は突然の朔夜の行動に理解できない。 頬がジンジン熱をもち朔夜の手形が残っていた。 「テメー!俺に好きだとか抜かして、女抱いた汚れた手で気安くさわるんじゃねぇ!!」 一瞬にしてその場の空気が凍り付き、今までの静寂を破る。 「やっぱお前、やれれば誰でもいいんじゃん。考えて損した、今後一切喋りかけんな。汚い手で俺のこと触るな。」 朔夜が言い切ると、プイと目を逸らす。 ここまで機嫌の悪いことはない。 それに逆上し、日狩も堪忍袋の緒がきれていた。 「確かに好きとは言ったけど、色々と我慢してんだよ!こっちは溜まるもん溜まってんだよ!お前も男ならわかるだろーが!」 「はぁ?自分勝手も程々にしろよ!」 垣間見ると、朔夜の睫毛が濡れている。 それを日狩は見逃さなかった。 [*前へ][次へ#] |