小便塗れ
「…もしかしたら、あそこに居る人達、カミサマの居場所を知ってるかもしれないね……」
そうは思うものの、なかなか近付く事は難しそうだ。
かと言って、この幼い少年を置いていくわけにもいかない。
だが、いつまでもここに居ては危険過ぎる。徐々に妖気に犯され、リファの体力は段々と蝕(むしば)まれていくばかり。
色んな問題ばかりの中、どれか一つだけを選択する事は容易いものではない。
だが、時は待ってくれない。早く決断しなければ命取りになるだろう。
「…仕方ない。やっぱり一旦ここから離れた方が良いよね……」
やはり先に出口へと急ぐ事にしたようだ。リファは、再び少年を抱きかかえようと手を伸ばす。
だが、新たな問題にぶち当たる。
「…お姉ちゃん、ボク…おしっこしたくなってきちゃった……」
「…え……」
何ですとおぉぉーー!?このタイミングでおトイレですか!?
流石にそこまで予想出来なかったリファは狼狽えてしまい、少年を抱きかかえるもどうすれば良いのか分からなくなった。
ただその場を行ったり来たりする行為を繰り返すだけ。
だが、尿意により身体をブルブルと震わせている。そろそろ限界のようだ。
少年はリファから離れるなり、タタタッと走って行った。
「あっ!ちょっと待って!一人で行っちゃ危ないよ!」
慌てて少年の後を追うが既に遅く、彼は自分の父親が居る場所へ向かってしまった。
一方、そこではまだ会話の最中であった。ピッコロという男が最後まで言い終える前に、事件は起きた。
「貴様を助けに来たわけではない。オレはコイツらに借りがあ…」
ーージャアァァーー……
「あ……」
リファがそこへ向かおうとした時には、既に遅かった。
「うわっ!な、なんだ!?」
何か生温かい感触に、ビクっと肩を揺らし上を見上げるその人物。
あろう事か、 少年の尿がピッコロの頭に向かって直下したのである。
これにはピッコロも流石に驚いてしまい、慌ててその場から離れた。
「ご、悟飯!?」
父親である悟空も、突然の息子の登場に驚いているようだ。
「おい孫!貴様っ…てめえのガキならちゃんとしつけろ!」
少年の小便により、ずぶ濡れになったピッコロ。未だ頭に巻いているターバンから滴が垂れ落ちている。
案の定、不機嫌になりながら悟空に文句をぶつける。
だが、それも無理はないだろう。
「いや…そんな事言われてもよ…小便はしゃあねえだろ……」
「貴様のその甘さが命取りになるという事が、何故分からん!?」
「いや待てよピッコロ!落ち着けって!話は後でゆっくり聞いてやっからよ!」
「何だと貴様!他人事みたいにほざきやがって!」
戦いの最中にも拘らず、一人の子供の小便で口論になってしまった。
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