少年の異変
もう一度説明しよう。
アトラス聖霊が纏う七色のオーラは己の姿を消すという能力が込められている。
現在もその状態にある。
だがーー。
「ねえねえ、おねえちゃんはこんな所で何してるの?」
「あ、あははは……」
なんで見えてるの!?
目の前にいる可愛らしい少年は、当たり前のようにリファに問いかけてくるのだった。
これには流石のリファも、笑ってごまかす他なかった。
だが、無邪気な子供の質問を台無しにするわけにもいかない。
彼女は少年の前でしゃがむなり、彼の頭をそっと撫でた。
「…お、おねえちゃん、ちょっと人を探してるんだ〜。でも、なかなか見つからないの」
自分の正体を絶対に悟られまいと、無理やり平然を装うが、返ってぎこちない話し方になってしまった。
「…き、きみはこんな所でどうしたの?迷子になっちゃったのかな?」
次第に少年を撫でる手がプルプルと震えだした。大丈夫なのだろうか。
「ううん、ボクね〜さっきまで恐竜しゃん達と遊んでたんだ〜…うぃっ!」
「ーーっ!?」
いかにも眠そうに半分閉じられた瞼(まぶた)。不定期に出るしゃっくり。そして、呂律の回っていない意味の分からない言動。
少年の様子が明らかにおかしい。
リファは彼の額に手を当ててみるが、熱などはない様子。
「…ど、どうしちゃったんだろう……」
対処法が全く分からず、困りに困ってしまった。彼を正気に戻す方法はないのだろうか。
「…ううん、あるにはあるけど…仕方ない、ダメ元でやってみよっかな……」
リファはゴクリと生唾を飲み込むと、少年の両手を握る。
そして目を閉じ、神経を集中させる。すると、彼女の両手から七色のオーラが少年へと送られ、全身に纏い始めた。
アトラス聖霊の七色のオーラには、癒し効果があるとされている。
因みに、オーラの色によって効能が変わるらしいが、彼女が使えるのはこの一種類だけのようだ。
「……んっ…う、うーーん!」
そして、しばらくが経過すると少年の身体からオーラが消えた。
その直後、少年は長い眠りから覚めた時のように大きく伸びをした。
「……あ、あれ?お姉ちゃん、誰?」
目の前に居るリファにすぐに気が付き、首を傾げる。
まるで、先程の事など一切知らないと言わんばかりにキョトンとしていた。
リファが送ったオーラにより、少年は正気に戻ったようだ。
だが、リファは彼のこの症状がただの酔っ払いだったという事は、最後まで気が付かなかった。
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