短編集 その@
仔猫 (かすが)
じぃ…、と、視線を感じる。
その視線を辿ると、今か、今か、と、待ちわびる一匹の仔猫。
「おいで」
そう声を掛ければ嬉しそうに駆け付けて来る。
「かしゅがしゃん」
くるくる、と、目まぐるしく表情を変える、この仔猫。
「食べる?」
喜ぶ顔が見たくて、手に入れたみつまめ。
案の定、にぃ、と嬉しそうに笑う。
「うんっ。食べりゅ、食べりゅ」
世間や、言葉…、全てを知らないこの仔。
だから、なのか?
妙に、守ってやりたい感情にかられる。
キラキラ、と、見るもの全てに、好奇心丸出しの眼差しで見つめている。
仔猫に教えるのは、私の役目。
謙信様のお手を煩わせる訳にはいかない、と、思い、自ら世話役を名乗り出た。
「かしゅがしゃん、みちゅまめ、キライ?」
きょとん、とした眼差しで、かすがを見つめる。
「いや…考え事をしていただけだ。私も食すとしよう」
その言葉に、嬉しそうに笑う。
もうすぐしたら、この仔猫の飼い主が迎えに来る。
迎えに来なければ良いのに。
そうすれば、もっと、側に居る事が出来るのに―――…。
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あとがき
雪←かすが、です。
かすがじゃないよね(^^;)
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