まぼろばの蒼月
010
下肢から駆け上がる快楽。
身体中に、逃場のない熱が巡る。

『あぅッ、あァんッ!!』

ギリッ、と、指が白くなる程に、シーツを握る。
逃げたいのに、逃げられない。
快楽に、思考が奪われる。
砂山を掻き崩すように、理性が零れ堕ちていく。

「おれに、溺れろよ」
『……え?』
「おれだけに、溺れろよ。他の野郎に、メルはやらねェ。おれだけの"オンナ"だ」

ズル、と、胎内に居た指を引き抜く。
そして、熱を帯びた陰茎が、胎内に侵入する。

『ひ、ぁあッ!!あ、つい……ッ!!』
「その"熱"は、どうしようもねェ、な」

ギシッ、と、ベッドが軋む。
何時もなら、激しく打ち付けてくる筈の下肢が、緩やか。
そんなエースの動きに、焦れったさを感じる。

「どうした?メル」

クスリ、と笑う。
どうやら、エースは性的な興奮状態になると、サディストになるようで。

『くぅ……んッ、あっ……やぁ……』
「嫌なら止めようか」

胎内に居た、陰茎が出て行こうとする。

『お願、い。意地、悪……しないで……ッ』
「ーーーー……」
『もっと……、強…く、抱いて』

ポロ、と、目尻から一筋の涙が零れ落ちる。
するり、と、エースの首に、シャナメルの腕が絡む。
そして、引き寄せられるかの如く、お互いの口唇が重なる。
くちゅ、ちゅ、と、水音が、ベッドの軋む音に混じる。
飲み切れなかった物が、シャナメルの口端から漏れ、流れ落ちる。
それを追う様に、エースの舌が舐め取り、再び、吐息を奪う様に、重なる。

『ふ……ッ、んんッ、ん!!』

シャナメルの意識がキスに向いている間に、エースは器用に、体位を入れ換える。
対面座位である。

「メル、これ好きだろ?」
『ぁあッ、っくぅ……』
「メル、答えて?」

突き上げられては、自身の体重で、奥深く迄、エースを受け入れる。
きゅう、と、陰茎を包む膣壁が、エースの求める答えを導く。
が、それだけでは"足りない"。
"言葉が欲しい"のだ。
幾ら、シャナメルがエースの女であると知っていても、ちょっかいを出す輩が居ない訳ではない。
自分達の情事を、聞き耳立てて聞いている輩に、聞かせたかった。
シャナメルにちょっかいを出すだけ無駄、と、云う事を知らせたかった。

「答えねェと止めるぜ?」
『……ぁ、ッ。好き、ィ……ッ。もっと……ッ、奥まで、来てェ』

シャナメルの腰が、エースの動きに合わせて、揺れる。

『エースく……ッ。好き……ィ。大好き』
「!!」
『他のヒトなんか、要らない…ッ!!エースくん、以外、要らない……からァッ!!』

その言葉に満足したかのように、ニヤリ、と、笑う。

「しっかり捕まってろよ?」
『ふあッ!!あッあ!!』

ぎゅッ、と、エースの首筋にしがみつくように、身体を密着させる。
それを合図に、エースの動きが激しさを増した。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!