まぼろばの蒼月
004
「お愉しみの所悪りィけどよ、緊急会議だ」
「ーーーーー……メル」

エースは耳元に口唇を寄せると、

「この続きは後でたっぷり、な」
『!!?』

ちゅ、と、柔らかな頬にキスを落とすと、エースはサッチと共に、会議室へと向かった。
それを見送ったシャナメルは、小さく溜息を吐く。
ジンジン、と、疼く身体。

『どーしよ………』

一人で慰める事なんて出来る筈もなく。
もて余した身体の熱の行方に迷っていると、鼻先にエースの匂いがふわり、と、薫る。

『エースくんの匂い……?』

シーツに染み付いたエースの匂い。
フンフン、と、鼻を近付けて嗅いでみる。

『エースくん………』

きゅう、と、シーツを抱き締める。
そして、不意に過った不安。

[どーしよ……。もし、バレたら………]

何時かボクも載るだろうって、エースくんが云ってたのだから、間違いない。
けれど"蒼の魔術師"である事も載るだろう。
そうなったら、エースくんの立場が悪くなる。
それだけは、嫌だ。
やっぱり、セイレーン族は不幸を招くんだ。
その内、エースくんを殺しちゃうかも知れない。

[エースくん、エースくん……]

怖い、コワイ、こわい。
恐怖心が蘇る。
皆に過去を知られたら………。

[暗殺者は、弱味を作るな、と、云っただろう]

ヴァルハラのマスターの声が脳裏を過る。
今のシャナメルの弱点、と、云えばエース。
ずっと狙われ続ければ、エースは自然と離れていくだろう。
手放すには遅すぎた。
手放したくない、失いたくない。

『エースくぅん……』

シャナメルは、シーツに顔を埋めて、小さな身体をより小さくして踞っていた。
そして、自身の身体を抱き締め、襲い来る恐怖心に耐えていた。






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