色々小説 僕と俺の境界線 「スザクさんっ?!」 「久しぶり、ナナリー」 最愛の妹に向けられる、ニッコリ微笑む親友。 その優しげな笑顔は、あどけなさこそ無いが、昔のままだった。 クラブハウスからスザクを見送ったルルーシュは、親友に会えた喜びと、切ない気持ちに溜め息をついた。 『ルルーシュ、僕たち外では他人の振りをしよう?』 『下手をしたらバレてしまう。 君がブリタニア皇族だと言うことが』 スザクの言ってることは正しい。 アッシュホード学園で普通に生活してきたルルーシュ・ランペルージがイレブンの枸木スザクと知り合いではおかしいのだ。 だが、唯一の親友が側に居るのに… 俺は、耐えられるだろうか? 部屋のドアを開けると、ナナリーがルルーシュを待っていた。 「お兄様、スザクさんと会えて本当に良かったですね。 私、まだ夢の様です。 また三人で楽しく暮らせるなんて」 ナナリーは本当に嬉しそうに、赤い顔で微笑む。 ルルーシュはそんなナナリーに微笑んで頷いた。 「そうだな。 また、昔みたいに…」 言って、果たしてそう出来るだろうかとルルーシュは思った。 七年前とは、変わってしまった。 『僕ら』 スザク…お前は何時から自分を『俺』から『僕』と呼ぶようになった? なんだか、ルルーシュにはスザクが再会する前の時より、遠い存在に感じられたのだ。 僕と俺の境界線 久しぶりに会えた親友達は、あの時と変わらない。 優しい世界が回っていて、思わずほっとしていた。 ああ、たった七年前だけど… 随分と懐かしかった。 ルルーシュのあの驚いた顔…面白かったな。 ………一緒に居たい。 でも、駄目だ。 『僕』とルルーシュは知り合いでもなんでも無い他人なんだから。 こっそりクラブハウスに会いに行くだけで我慢しなきゃね。 『僕』は、名誉ブリタニア人。 イレブンでありながら、ブリタニアに尽くすことで認められた名誉ある人民。 だから我慢しなきゃ、今迄そうして来たように。 ルルーシュに辛い思いをさせるのは心苦しいけど、それよりも皇族だとバレてしまう方がルルーシュにとって迷惑を掛ける。 ただでさえ名誉ブリタニア人は元イレブンなだけあってこのブリタニア人しか居ない場所では風当たりが酷いんだから、ルルーシュにいらぬ心配を掛けたく無かった。 今の扱いに不満が無い訳が無いが、これが今のイレブンとブリタニアの状況だ。 そう、それはもう随分と昔からずっと。 スザクがもっと幼い頃から… 小さい頃は、ただ思うことを口走っては、周りの大人達に怒られていた。 『イレブンじゃ無いっ! 日本人だっ』 『黙れこの泥鼠がっ』 『うわぁっ』 でも、積み重なる体罰、蔑みの言葉… そんなことを続けられ、いつの間にか自分を俺では無く僕と呼ぶ様になっていた。 自分を『僕』と呼んだことにルルーシュが少し反応したことにスザクは気付いていた。 だけど何も言えず、ただ笑った。 変わらなければならなかった。 変わらなければ生きていけなかったのだ。 『俺』は日本人。 『僕』は名誉ブリタニア人。 今の世界を生き抜く為に、自然に備えられた境界線。 「でも… いつか表の世界で『俺』に戻ることが出来るよね。 ユフィ…」 いつか… この境界線を崩されるまで、スザクは戦い続ける。 小さな希望を胸に。 そう、この境界線が崩されるまで… 「ルルー、シュ。 ど、うして?」 「ユフィーっっ!」 えんど [*前へ][次へ#] [戻る] |