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歪みのリボーン
赤いアリスのお洋服



やって来るだろう衝撃は来なかった。


その代りに、温かい液体が俺に一滴落ちた。

恐る恐る上を見上げて居たのはあの変態猫耳パインだった。


「骸…お前大丈夫か?」

骸の背中には俺を庇って突き刺さったフゥ太の刺で血が流れている。

「全く、貴方は馬鹿ですか?」

「なっ?!」

伸ばそうとしていた手が止まる。

「人が折角心配してやってんのになんてこと言うんだっ」

骸ははぁっと溜め息を吐いて肩を落とした。

「命の恩人にそんな口が聞けるなんて随分と粗末な神経をお持ちで」

「なっ!
そ、それはお前が俺を馬鹿にするから…」

「だって馬鹿で単細胞で無神経な方でしょう?」

そう言ってクフフと笑うこいつを殴ってはいけないだろうか…

「は、はひ。
骸さん大丈夫ですか?」

今まで遠くに避難していたハルがフゥ太を後ろにくっつけて話し掛けて来た。

それに骸はニッコリ笑って返す。


「大丈夫ですよハル。
やはり女性は御優しいですね。
フゥ太には嫌な思いをさせてしまってすいませんでしたね」

骸に話し掛けられたフゥ太は怯えたようにハルの後ろに隠れてしまった。

「けっ、男が猫耳なんて付けてっからだよ」

俺はハルと俺との扱いの違いに苛ついて悪態をついた。


「しょうがないですね。
彼には色々と迷惑を掛けましたから…」

「あ、ハル…
お背中の針抜きます」

ハルが骸の背中に手を伸ばす。

それを骸が止めた。

「ハルがそんなことしなくていいんですよ。
そこの馬鹿にやらせますから」

そう言って俺を指差す。

「わぁーたよ!
抜いてやるから馬鹿ばか言うなよ」

俺は骸の背中に手を伸ばす。

針は何本か背中に刺さっている。
本当は平気な顔をしているが、相当痛い筈だ。

罪悪感が込み上げて来る。
そして恐怖も…

「……悪かったな」

「はい?」

「っ抜くぞ!」

俺は一本を握って一気に引っこ抜いた。

「っ…」

血は出て来なかったが、骸の呻き声が微かに漏れた。

「はひ!
ハルは包帯を準備します!!」

それを見たハルがバタバタと救急箱を捜しだす。

「…………骸、さん。
ごめんなさぃ」

フゥ太は顔を俯かせ表情は分からないが、辛そうな声で骸に謝った。

そんなフゥ太に骸は優しく微笑んだ。


……やっぱり、優しい奴なんだな。

「大丈夫ですよ。
それに悪いのは馬鹿で間抜けで君をイヂメタアリスですからね」

前言撤回、こいつ一々嫌味ったらしい。

「あー悪かったよ!
いつまでもネチネチ言いやがって!!
あっ!」

俺は自分の手を見て固まった。
引っこ抜いた針は鋭くて、大きくて、赤い…

赤い…
手も、針も、俺…も?


「……もう大丈夫ですよ」

「えっ?」

見ると骸は立ち上がってハルから包帯を受け取っていた。

まだ全部針を抜いて無かったのだが、俺が固まっている間に骸が自分でやったらしい。


「クハ〜全く、君は本当に何の役にもたちませんね」

「うっ、悪かったな!」

「悪かったと思う態度ですか?」

包帯を巻きながら骸が俺に詰め寄る。


「うっ!」

俺が一歩後ろに下がり黙ると、骸はハルが腕に掛けたまま持っているものを見てニヤリと笑った。

俺は嫌な予感を感じた。

「悪かったとお思いなら一つ言うことを聞いて貰いましょうか」

「げっ」

骸はハルから服を受け取る。

ハルが嬉しそうに笑う。

バサリと音を立てて可愛らしい服を目の前で広げられる。

「これを着て貰いましょう。
君はアリスなのですから」


「嫌だーっっ!」



俺は無理矢理骸にヒラヒラな服を着せられた。




「お似合いですよアリス」

「だから俺はアリスじゃねーって!」

「そうですね、やはり君に女装はキツいですね」

「そっちかよ!
そうだけどまず俺はアリスじゃっ」

「とりあえずスネ毛等と言う視害物を取り除きましょう」

「はいっ、シェイバー持って来ました」

「ムースも持って来たよ!」

「止めてー」


此所に俺の味方は居ないのかっ!











赤い、赤い

ふわふわなスカート

この服はこれから


アリスと長く、短い旅を共にするもの


でもねアリス、この服は


本当は赤では無いんだよ?


さあアリス、旅の準備は整った。


その服を着て、ひねくれ猫に導かれ


旅を始めよう!


真実と虚像の冒険は始まったばかり…




アリス、この服が赤いのは…







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