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歪みのリボーン
対極の猫



廊下に何故か開いていた穴から落ちた持田は、長い直下を終えて、地面に足を着けた。


長い落下からして、身体に受ける衝撃は凄いだろうと身構えた持田だったが、地面に着地する直前、身体がフワッと軽くなり、すんなり着地することが出来た。


「……どうなってんだ」

「急がなくっちゃ」

「あ、おい!」

京子がまた走って行くので、持田は追いかける。


追いかけながら、持田は見えてきた景色に顔色を悪くする。


「何処だここ…」


全く見たことの無い景色だった。

小高い丘に居て、前方に大きな森がある。
その森の奥には大きな城まで見えた。

「てかなんで廊下に穴なんてあんだよ!」

持田は叫んだ。

「入口だからですよ」

「あぁ!?」


突然聞こえた声に、持田は驚いて声を荒げた。

自分よりちょっと上から聞こえる声に顔を向けると、そこにはクフフと変な笑い方をする猫耳少年が浮いていた。

持田は顔を引きつらせた。


「京子つ!
待ってくれー
変な人出たー」

かなり距離の開いた場所で走っている京子に持田は大声で叫んだ。

だが京子は振り向くことも無く走り続ける。

「クフフ、シカトされてますね…
失礼なこと言うからですよ?」

「シカトされてねぇっ」

持田が必死に走っていると言うのに、その猫耳少年は嫌味ったらしくふよふよと楽そうにその上からついて来た。

持田が睨み付けるが、少年はクフフと笑って尻尾を揺らしている。

「僕の名前ですか?
六道 骸です」


「聞いてねぇっ!」


聞いても無いのに自己紹介して来た骸に持田は怒鳴る。


「だいたいなぁ、男が猫耳とかなんの罰ゲームだっつうんだよ!
気持ち悪いんだよ!」

「白兎を追っているんですねアリス?」

「無視か?!
てかアリスじゃねぇ」

「白兎は…急がないと首をはねられるのですよ」

「は?!」


首をはねられる

突然出た物騒な言葉に持田は足を止めた。


「どう言うことだ?
白兎って京子のことだろう?」

ちゃんと身体ごと向けて、骸を見た。

「って、うわ?!」

すると骸は持田の目の前、もう少しで額がついてしまうほど、顔をちかづけた。


持田の瞳に、赤と青が広がる。

それは骸の瞳だった。

赤と青の対極の色

透明の様に澄んでいる様な

深く濃い様な

矛盾した瞳に、持田は固まってしまった。


「白兎は京子です。
でも京子ではありません」


そう言って笑う瞳も、本当に笑っているのかいないのか持田には分からなかった。

瞳も表情も、曖昧。


「……言ってることが矛盾してるぞ…」


「猫は真実を知っています。
でも本当かどうかは分からない。
本当を語っても、それは偽りでもある」

「はぁ?」

持田はポカンと瞳を見た。


「貴方がアリスであるのが真実でも、それは貴方の真実では無いのでしょう?」

「…………?」


持田にはやっぱり骸が言っている意味が全く理解出来なかった。


「此所は不思議の国…
持田剣介、白兎を追いなさい。
アリス、笹川京子を追いなさい」


すぅーっと骸の姿が消えていく。


「へっ?
おいっ、骸っっ!!」

足が無くなり


腕が無くなり


胴が無くなり


顔が無くなり


赤と青が残る。


「京子は森の中へと入って行きましたよ」


その骸の声が最後に、瞳も霧の様に消えて行った。



「やべ…
ちょっとちびった」



持田は綺麗に消え失せた骸が居た場所を見て、判泣きした。







青く、対極した瞳を持つ猫…


その猫はその瞳と同じ様に


全く対極なことを言う


猫は不思議の国の真実を知っている


だからこそ嘘は本当
本当は嘘


猫はアリスを惑わせる者


猫はアリスを導く者


猫は…

最も理解を望む捻くれ者


猫はアリスに本当を望んでいる。



さあアリス!

辿り着いた不思議の国で、偽りと真実の旅を始めましょう!!





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