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ギアス夢物語
No.01「プロローグ」


少女はただ、そこに座り込んでいた。

動かず、見ず、考えず。

暗闇の奥深くで、まるで、それと一体になるように…ー


だが、それもしょうがないことだった。

何故なら彼女は、何も分からないからだ。

この空間も、空間に居る理由も、そして…


自分と言う存在さえ、暗い闇に飲み込まれ、分からなかった。

何も見えず、自分さえ分からないのでは、なんの意志も生まれない。

少女が、完全に闇に飲み込まれる直前、暗闇の中、たった一つだけ光りが射した。


少女に見えなかったものが、光りの反射によって瞳に映った。

初めに道が見えた。
次に白い手。
桃色の流れる髪。

少女は走り出した。
光りに向かって。

光りに照らされ、見えた自分を、世界を、少女は全て知りたくなったからだ。

知らなくてはならないと思ったからだ。

光りに近付くごとに、少女には見える様になって来る。

大好きな、花の咲き誇る庭園。

今迄の記憶が、自分が何者だったかを…ー

大好きなお姉様に、義兄弟の皆。

そして…

少女の瞳に涙が浮かんだ。

そして…ー

『自分のことを嫌いにならないで下さい』

『いつも、片思いなんです』

『ユフィ…』

大好きで、最も愛する彼の笑顔が、少女の瞳に映った。

少女の唇が震えた。

少女はもう暗闇には居なかった。
今度は真っ白な世界が少女を包んでいる。

「す…ざく、私は」

白い光りは少女の全てを照らし出した。

「私は…死んだのですね」


少女の名前はユーフェミア・リ・ブリタニア。

「貴方をっ、優しい貴方を一人にしてっ!」

神聖ブリタニア皇族の第三皇女。

特区日本を企画、立ち上げ、その開催日に…
集まった日本人を虐殺し、テロリスト、ゼロの手により殺された。


『特区日本、は、成功…しま、したか?
皆…は』

『っ、うん、成功したよ。
皆、とっても喜んで』

『良かっ…た』

『ユフィっ!!』

そして光りは、強く突き付ける様に、ユフィの瞳に本当の真実を写し出す。


「私がっ、スザクが一番大切に、望んだ世界を壊してしまった!」

『日本人は死んで下さい』

『自決して欲しかったんですが…』

『虐殺です!』

「どうして、なんてことを!」

ユフィの瞳に、初めの頃に見えた兄弟の一人が映った。

「ルルーシュぅっ」

分かっている。
彼の意志では無いことを。

間違ってしまった。

あれは偶然の惨劇。

ルルーシュもスザクも…
私の大切な人達が、共に生きようとした人達が悲しみ、苦しむ結果を…

私が招いてしまった。

「行かなきゃ、ルルーシュと、私の大切な騎士、スザクの元に」

今迄に無いほどの強い光りから扉が現れた。

ユフィは紫色の強い光りを写しながら、迷い無くその扉を開いた。

大切な彼を、大切な人達を助ける為に。



扉の向こうには…



「貴方は…誰?」


一人の少年が居た。





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あきゅろす。
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