ギアス夢物語
No.02
彼はいつも一人だった。
学校に居る時は、教室の一番隅の席に座っていつも一人空をぼーっと見つめていた。
家に居る時は、自分の部屋を一歩も出ず、家族との食卓に加わることもしなかった。
彼は、自分から望んで人を遠ざけた。
怖かったからだ、人が。
「お帰りなさい直哉坊ちゃま」
彼は家の庭園で掃除をしていた使用人からの挨拶に何も返さず、いつものように真っ直ぐ自分の部屋に向かう。
だが、部屋に向かう為に上る階段で、彼の前に立ちはだかる少年が居た。
「お帰り、直哉」
「…………」
少年が話し掛けても、先程と同様彼は何も返さなかった。
少年を避けて階段を上がろうとするが、少年はそれを手を掴んで阻止する。
「待ちなよ、愚図」
彼は溜め息をついて、諦めた様に少年に顔を向けた。
「……なんだ?」
無表情な顔が向けられ、少年は少し眉を寄せたが、直ぐに意地の悪い笑みを浮かべた。
「兄さん、帰って来てるぜ」
「っ?!」
表情の無かった彼の顔が歪んだ。
「後で部屋に来いだってさ。
覚悟して行った方がいいよぉ。
兄さん随分機嫌悪かったし♪」
少年はこれ程楽しいことは無いと言うふうに、ニッコリ笑って彼に忠告する。
彼は少年の手を振り払い、逃げる様に階段をかけ上がり部屋に向かう。
「今度は打撲じゃ済まないかもね!」
彼の背に少年は声を掛けた。
バタンッ!
扉が強く閉められた音が響いた。
「フン、直哉なんて死ねばいいんだ」
彼が居なくなった階段で、少年は今迄浮かべていた笑みを歪ませ、そう吐き捨てた。
一方部屋に入った彼はその場で座り込んだ。
自分を落ち着かせる様に深呼吸する。
「………どうして、俺だけ」
ぽつりと呟いた彼の前に、強い光りが現れた。
「っ?!」
彼は目を見開いた。
「貴方は…誰?」
信じられないことに、強い光りから少女が現れたのだ。
少女は彼に目をとめて、優しい笑みを浮かべた。
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