姫と騎士
11
「お兄さまにその気がなくても夜に寝所へ忍び込むわ!寝ぼけたお兄さまに好きにされたっていえば後宮に入らざるを得ないでしょ?王子が手を出した娘はどんな身分であれ後宮で迎え入れられる決まりですもの。私は本気ですから!」
ラファ団長は唸り、宰相は黙りこむ。
そしてお父さまがゆっくりと口を開いた。
「…アルバートがいくら女関係で噂が絶えないからと言って、近親相姦は困るぞ。いくらなんでも」
「そうですか私は困りません。この国に残れて万々歳」
「えーと…まずはカイ殿の意見を聞いてみては?」
宰相の言葉に皆の視線がカイに一斉に向く。
思考していた様子だったカイが口を開きかけたのを見て私はそれを遮った。
「ダメよダメ!カイの意見なんて聞かないわ。カイは私のだもの、私がそばにいてと言ったらそばにいなくちゃいけないの。聞く必要なんてない!」
自分でもめちゃくちゃなことを言っているのは分かっている。
だけどカイは模範的で規則に忠実な騎士だから、聞いてしまえばきっと国の決まりを優先する。
私の言葉に圧巻され、カイは驚きに目を見開き周囲はあきれている様子。
そんな中でお父さまだけは違っていた。
「…ふっはは!その台詞、カイが騎士学校へ入学する時にも聞いたぞマリア」
「えっ…」
「覚えていないのか?」
「お、覚えてます」
私が8歳になる年にカイは騎士学校に入学した。
騎士学校に入学したら寮生活になり滅多に会えなくなると知った私は当時、相当に駄々をこねた記憶がある。
思い出して、昔と同じことを言っている自分に恥ずかしくなり顔が熱くなった。
「愛娘の最後になるかもしれないわがままだ、聞き入れようじゃないか。カイを今日より第一王女マリアンナの護衛とする。特例だ」
最後の一言は威厳を保ちながらも王としてではなく私の好きな父親としての笑顔での言葉だった。
私はお父さまに駆け寄り抱きつく。
「愛してるわお父さま!」
後ろでラファ団長の大きなため息が聞こえたけれど、気にしない。
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