短編 太陽と雨音の奇跡 「馨、お前おせぇーよ」 「…ごめん」 「…ったく」 幼い少年が、二人。 片方は小学生の象徴であるランドセルを背負わず、枝を片手にあるいている。 ……俺だ。 もう片方は二つのランドセルを一つ背負い、もう一つを重そうに手で持っている。 身軽な少年は枝を振り回し、ランドセルを持っている方を急かす。 「ほら、早く来いよ…急がねーと日が暮れるだろ?」 「う、うん」 気が弱そうな少年は返事と共に、重たいランドセルを力一杯に持ち上げながら走った。 ―――馨…。 幼い俺は馨をほって先々進んで行く。 ランドセルが鉛の様に重そうだ。 この時の馨はどう思っていたのだろう。 それでも、こんな態度でも、俺は馨が…好きだった。 ―好きな気持ちと恥ずかしさは自分に嘘を吐く― [*前へ] [戻る] |