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月明かりのない密室(六道)


暑くて眠れない、と言う程今年の夏は暑くない。
しかしやはり汗がしっとりと肌に浮いて、寝苦しいのは変わりない。
クーラーも扇風機もない、聞こえるのはどこかの家の排気音と虫の音。


「…………」


ふいに熱い何かが頬に触れた。
閉じていた目を開けるとすぐそばに他人の気配。


咄嗟に声を発しようとした口元を熱い何かで覆われる。


「む……」


「静かに」


耳元に吹き込むように囁かれた声にびくりと体が震えた。



「………何してるの?」


「襲いにきました」


クフフ、と笑いながら骸が見下ろしていた。
汗ばんでしっとり冷えた肌に骸の熱い手が当てられた。
抗議の意を持って身を捩るけれどそれが意味を成さないことは骸がこんな夜更けに現れた時点で分かっている。


「ね、せめてクーラーを…っ」


「嫌です。せいぜい汗と涙に濡れてなさい」


暗闇の中、骸の顔は輪郭しか見えない。
今更だけど、これは本当に骸だろうかと私はぼんやり思った。




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