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学園天国!
教えてやりたい!








車に乗り込む。
ちとせと、病院へ急いだ。






─────…






「……飲んでないよ」

恭弥は平然と、そう答えた。
息を切らして病室に駆け込んだはいいが、当の本人は読書にご執心。
難しい顔をして何を読んでいるのかと思えば、なんと鳥図鑑だった。


「それはよかった…けど、その薬は?」

ちとせが恭弥に訊く。
ページをめくり掛けていた奴の手が、ピタリと止まった。

ああ、本当に恭弥が催淫剤なんかの餌食にならなくてよかった…!
(いやでも少し見たかった気もする?…ああ、オレは何て男だ…っ!)

「そんな薬、捨てたよ」

「す、捨てたって、何で…」

事情は軽く彼女から聞いている。
仮にも恭弥たちには「惚れ薬を相殺するための薬」だったはずだ。
二人は怪しい科学教師からもらったその薬を有り難く思っていなかった。

…だから
シャマルから貰った薬は、確かに二人にとって蜘蛛の糸だったはずなのに。


なぜ、恭弥はその薬を捨てた?


「恭弥、もしかして…」


オレは二人にも聞こえないようにひっそりと呟く。

ひとつの可能性が、頭の中にパッと浮かび上がった。

恭弥がシャマルの薬を捨てた理由。

恭弥が、その怪しい科学教師の薬…つまり惚れ薬を、有り難くないと思っていないということ。
それは、有難いまでは行かないにしろ必要性を認めているということだろうか。

それが何故だかについては確定するに至らないが、恭弥に関してはシャマルの薬はいらないらしい。


…そして理解した。
恭弥のNOはYESであることに。究極の意地っ張りであることに。


「全く、いくら薬が嫌いだからって…」

「ちとせには関係ないでしょ。用が済んだなら帰ってくれる?」

「あのな、私はあくまでお前を心配して…」

「大きなお世話だ」

「…っのやろォ!」


銃を取り出したちとせを慌てて止める。
いくら殺傷能力はないからと言っても、銃ごと投げられれば痛いだろう。

恭弥はちとせに、何か隠してる。

もし恭弥が薬嫌いだとしたら、サクラクラの処方箋はどうしたっていうんだ。
今だって緊急事態だろ?

恭弥には、薬を飲みたくない理由があったんだ。


もしかして、それは──…



「とにかく、大丈夫なんだな?」

「さっきからそう言ってるだろ、早く出ていけ騒がしい」

「はぁ……」


ちとせはため息をつく。
そりゃそうだ、心配して駆け付けたのに「鳥に餌をあげといて」なんて追い返されたんだから。


「ディーノ、帰ろう」

彼女がむっとしてコートを手に取る。
オレは恭弥の本当の気持ちがしりたくて、ちとせを先に行かせることにした。


「ちとせ、悪いが先に行っててくんねぇ?」

「?…どうしたんだよ」

「男と男の話し合いがあるんだ」


そう言って恭弥に視線を向けると、奴もオレを睨み返してきた。
「何?まだ何かあるの」と言いたげな目。


「…じゃあ、下で待ってるよ」

ちとせはため息をつきながら病室から出ていく。
きっと彼女は、オレたちが今から何を話すかなんて考えてもいないはずだ。
それが、たとえ自分のことであろうとも。







─────…







元よりオレは、勿体ぶるのが得意ではない。


「恭弥はさ…ちとせのこと、どう思ってんだ?」

でもあくまで自然に。
前々から考えていたこともあって、今回はその報告もしておこうかと。


「…なにそれ」

オレの言葉にやっと恭弥は鳥類図鑑から顔を上げる。
なんだ、やっぱ気になんのか。


「いや、オレもちょっと、その惚れ薬って興味あるなーって…」

いや恭弥の気持ちの方が興味はあるんだけど…。


「使う相手なんかいないでしょ」

「な…っ、そ、そんなことないぞ!」

「へぇ、いるんだ?」

「お、おうよ!」


って、違う!
オレが探られてどうする!


「恭弥、ちとせのこと好きとか…無いよな、」

「…さっきから何?どうしてちとせなの」

「いや、実は、な…」


オレはそこで、これを言うか言うまいか迷った。
でもこれは随分前から悩んでいたことでもあったし、これこそが、恭弥の気持ちを知る手掛かりかもしれないとオレは踏んでいた。


惚れ薬のせいもあるとはいえ、恭弥に、「強いから仲間にしたい」という思いがあっただろうか?

恭弥なら強者が出てきたとき、「仲間にしたい」なんて思うか?
でなきゃどうして、ちとせにあそこまで構う?

恭弥が強者に会いたいと思うのは「仲間にしたい」からじゃなく、「倒したい」からなんじゃないか。


「ちとせを、オレたちのファミリーに入れたいと思ってんだ」

「!」

そのとき、
恭弥の瞳が少しだけ揺らいだのを、オレは見逃さなかった。

ふう…と長いため息の後、恭弥は言う。


「…ちとせがそうしたいなら、好きにすればいい」

オレはその言葉に、二人の未来を見た気がした。









これはオレだけの秘密…



continue…





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あきゅろす。
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