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学園天国!
恭弥ぁあっ!








山本武。
薬、飲ませなきゃ。
教室。
ちょうど一人だ!


…アレ、身体が動かないぞ?
アレ、何で私、天井が見えるんだろう。
アレ、お前は───……。





─────…







「ボス、今日も修行か?」


ロマーリオが助手席から、オレに言う。


「いや、今日は恭弥にイタリアの土産を、な」

「ったく、そうやって理由つけて一々会いに行くから煙たがられるんだぜ?」

「ハハ、だって恭弥のやつ可愛くってよぉ…」

「ま、分かんないでもないけどな」


苦笑いしながら答えると、ロマーリオもハハッと笑った。きっと恭弥の部下のことを考えているんだろう。

オレはエンジンを切る前に時計を見る。
時刻は4時前。たしか今日は委員会もないはずだから、じゃじゃ馬は応接室で資料整理でもしてるだろう。(でなきゃ体育館裏で不良に制裁を下しているに違いない。)


恭弥が喜ぶだろうと思って買ったイタリア製のぬいぐるみ。シュタノフ社に無理を言って作ってもらった、ひよこ型の。
(また「僕を子供扱いしないでくれる」なんて言いながら棚に飾るんだろうけどさ。……うん、可愛い。)

ひとりニヤニヤする頬を必死で押さえ付けながら(前に「校内を半笑いで徘徊しないで」と注意されたことがあった)まばらに残る生徒たちの視線を集めて応接室に向かう。

ロマーリオにはすぐだからって車に置いてきた。
多分、恭弥の部下と飲みに行くだろうから。
(それに群れてるとあいつの機嫌が、な)


えーと、応接室、は……
2階、だっけ……?
いや3階?1階ではなかったと思うんだが……。
(くそ、いつもロマーリオと無意識で応接室に行ってるから分かんなくなっちまった……)

戻ろうか、とも考えたが、外の車を見ればすでにロマの姿は無し。
No.2の美学を語りに行っちまったか、とため息をついたら気が抜けて転んだ。


「ってぇ……!」


なんとかぬいぐるみは死守したもののジャンパーは埃だらけ!
鼻は打つし鞭は飛んでくし、くっそぉ、オレってホント……


「は、はなせっ、山本武…!」


ん?


「…っ、それは、無理だ…田中」


あ、この声は…、


オレはふと近くにあった教室を覗いてみる。
誰もいない、が、確かに此処から声がするんだが…。

──ガラガラガラ…


「えっ」

「あっ」


目が合った。
二人の男女が、いた。
なんともよろしくない状態で、こちらを同時に見たんだ。

しかもそれが雨の守護者である山本と………、


「ちとせ…」


組み敷かれている、彼女だったなんて。


「でぃ、ディーノさん!?」


あわあわ、と山本が慌てだす。大丈夫だ、しっかりと現場は見たから。
(これ、恭弥には秘密にしとくべきか?)


「なんで、ここに…」


ちとせが口をあんぐりと開けている。大方、山本に押し倒された意味なんて頭の隅でくちゅくちゅに丸まってしまっているに違いない。
そんな彼女らしい反応に苦笑いしながら、顔を赤くする山本とちとせの間の机に座った。


「いや、恭弥に会いに来たんだけどよ……」


気まずい空気を流すように軽い口調で笑いかけた。
こういうのは大人の仕事、ってな。

ロマーリオ置いてきたら応接室の場所が分かんなくなっちまって……
それで誰かに聞こうと思って教室開けたら、お前らがいたんだよなあ。
……ところでさっきのは、どういう状況だったんだ?

軽く軽ーく、ごく自然に確認してみる。
オレのファミリー候補にナニしてくれようとしてたのかなあ山本?


「ああ、さっきのな…」


ちとせはあきれ顔でため息をつき、山本はバツが悪そうに下を向いた。


「こいつが、薬は飲めないって言い出したんだ」


飛び出した一言に、ガクッと頬杖が落ちる。
なんだ、そりゃ。
薬って、何?

彼女は手に持っていた赤いカプセルをオレに見せた。

………え、これって…、
び、媚薬……?


「ドーピングで引っ掛かったりするかもしんないし、健康なのに薬なんか飲みたくないっていうんだ」


山本にちとせが視線を送ると、彼はまた恥ずかしそうに頬を掻いた。

…別に媚薬でドーピングに引っ掛かるとは思いがたいけど……。
(なんだかんだ理由をつけながら薬が苦手なのを知られたくないのかもな)

なんとも微妙な心境になって、オレは髪をくしゃっと掴んだ。
ちとせは山本に媚薬を飲ませるほど好きだったのか?(あちゃー…)
確かに爽やかだけどさ。
山本が押し倒してたわけじゃなさそうだけどさ。


「と、とにかく、オレ、今日は帰ります!」


沈黙に耐え切れなくなったのか居づらくなったのか、エナメルバックを肩から掛けた山本は言う。

おう、それが今は一番だ。
ちとせには訊かなきゃいけなねぇことが山ほどあるからな……。


「…仕方ない、」


別の方法を考えるさ。

ちとせもカプセルを胸ポケットに仕舞いながら山本を見送る。
そ、その媚薬は、どうするおつもりで…?


パタン、と閉まったドアの音にホッと胸を撫で下ろす。部下がいないとオレはここまでヘタレなのかと思うと、ちょっと落ち込む。


「ディーノ、いつ日本に来たんだ?」

彼女が山本の消えていった扉を見つめたままで問う。


「ん、昨日の夜だ」


オレは昔のままで変わらない彼女に視線を移し、恭弥のために買ったぬいぐるみを机に置いた。


「恭弥に会いに来たんだが…、」

思わないところで、幼なじみと再会ってとこだな。

ふっと笑うと、彼女も普段はめったに見せない笑顔でオレに笑い返してくれる。

「そう…、でも雲雀恭弥は今いない」

「え……、」

「風邪をこじらせて入院してるよ」

「風邪っ!?」

なんてこった。
あいつ、一言くらい電話くれたって………、
いや、恭弥がそんなことしたら逆に怖いな。

あー、と思考に浸っていると、オレの考えていたことが分かったのか、ちとせは「病院に行くか?」と言った。

オレはぬいぐるみを掴む。

「ああ、心配だしな」

あいつは何だかんだで寂しがり屋だから、と付け足すと彼女が苦笑する。


バンッ、と教室に誰かが飛び込んできた。


「子猫ちゃん!」

「……Dr.シャマル…」

「お前、さっきの薬、飲んでないか!?」

「…は?薬ならまだ……」

「よ、よかった…、ソレ、媚薬だったんだよ」

「えっ!?」

「じゃ、オレはそれを言いに来ただけだから……、」


他の子猫ちゃんを待たせてるからな!
と、彼はまた嵐の如く教室から去っていく。

ちとせの様子と今の会話からして、彼女は山本が好きで媚薬を飲ませようとしたわけではないようだ…。

ふぅ、とため息。
(ま、ちとせがそんな無理やりなことするわけないって思ってたけどな)

しかし彼女は、顔面蒼白だった。


「…ひ…が、」

「ん?」

「雲雀が、この薬、飲んじまう!」

「え……?」






──────────……





恭弥が媚薬!?
うわぁあ
オレの教え子がぁああ!!








continue…








中途半端で申し訳ない。
でも更新したかったんだ!

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あきゅろす。
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