お恥ずかしながら。
ねえ先生!2
標的
私のそのゲームは、つまり、早い話がターゲットがいないと成立はしない。
二兎追う者は一兎も得ず、というように、ターゲットは絞り込んで絞り込んで、1人だけ。欲は張らない。
(たまに追い掛けてない兎も捕れるけど。)
条件は、女の子にも嫌われずに(つまりは捕まえた兎の仲間に恨まれずに)兎を捕まえること。
コンディションは多い方が、クリアしたときの達成感も一入。
兎は寂しがりだから(なのに頭はなかなかいい)、少し構ってあげれば容易く罠に引っ掛かる。
そして私は、ゲーム終了のホイッスルを吹く。
─────…
こんなゲームを始めたのは、いつだっただろう。
思い出したくなかった。
たしか、あの人が死んでから。
父と母を交通事故で同時に亡くし、私の直接的血の繋がりは、弟だけになってしまった。
こいつを、絶対守らなきゃ、絶対、この子を……。
そう強い責任感の芽生えた、その直後の弟の死が。
たくさんのチンピラにからまれて、強姦・暴力……。
ああ、私がもっと強ければよかった。
もっと強ければ、弟は死なずに済んだのに。
絶望、なんて軽い言葉では表現したくない、あの感覚。
視覚も聴覚も触覚も味覚も嗅覚も、全部全部全部。
ちゃんと機能してくれない毎日。
目は世界をモノトーンに変えてしまったし、
鼻はまわりの危険を教えてくれなくなったし、
口は摂取の楽しみや価値を奪ってしまったし、
肌は痛みも温度も感じてくれなくなったし、
耳は何を聞いても脳までそれを伝えなくなった。
何も得られない毎日。
何も知れない毎日。
何も何も何も。
変わらない。
平凡で、…嗚呼。
いっそのこと、目を潰してしまおうか、
いっそのこと、鼻を削ぎとってしまおうか、
いっそのこと、口を縫いとめてしまおうか、
いっそのこと、肌を全て焼いてしまおうか、
いっそのこと、耳をちぎってしまおうか、
でもそれは、出来なかった。
それは、止められたから。
「死んじゃ駄目だ。
お前がいなくなったら、俺まで、死んでしまう…」
誰だっけ?
そんな事、まぁどうでもいいんだけど。
――――――――……
それからだよね、こんな娯しいゲームを見つけたのは。
一人暮らしの私に、もってこいの遊び。
両親が死んでしまった今、私の面倒を見てるのはお金持ちのお祖父様お祖母様。
適当に「教材が高い」だとか「足りない」だとかいってれば、孫の我が儘を聞くことだけが楽しみのジジババは、それならばと金をふるうわけだ。
しかし案ずることはない。
私はそのほとんどを、貯金として収めている。
普通の子と変わらない、自由に使えるお小遣いなんて2000〜5000円のものだ。
うんうん、顔だって平凡、成績も運動神経も平凡。
でも案ずることはない。
普通にちょいと仕草を可愛くして、ちょいとめかし込めば、そこそこ見れる顔や態度になってしまうのだから不思議だ。
うん、うん。
さぁ次のターゲットは誰にするかな?
先生は8人終わったし……、生徒は…何人だったかな。
最近先生はやってないなぁ。
あ、そういえば、
担任のあいつ、なかなか格好よかったじゃん。
あー、でも、何かとうるさそう………。
とりあえず様子を見るかな。
――――――――…
その時には、もう螺旋歯車は外れていたのかもしれない。
continue…
うっひゃ暗ッッ!!
なに、両親死亡とか縁起悪いよ(T_T)
でもすいません、なんかね、甘いというか何というか、そういうのを書いたり読んだりしてるとね、急に苦いのやら酸っぱいのやらを書きたくなるんですよねー(´Д`)
ではまた次回!
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