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年下やら年上やら
年下の僕は年上の君と




"恋の遠回りは愛の結末と"




あれきり、だ。

ちとせに彼氏が出来てから。

僕は一度も彼女に会っていない。


――――――――……


あれきり、だった。

私が彼氏出来たって嘘をついてから。

私は一度も彼に会っていないの。


――――――――……


普通の生活に戻って、
もう彼女に振り回される心配もないんだって。


…思ったのに。


彼女のいない放課後は
いつもより淋しくて、

彼女のいない買い出しが
途方も無く遠く感じた。

ぽっかり、空いた穴。


――――――――……


いつもどおりの学園生活に戻って、
あぁ早くきょんから会いにきてくれたらいいなって。


…考えてたのに。


2日経っても来なくって
一週間経っても来なくて、


私から突き放した筈なのに
…悲しかった。

心細い、毎日。


――――――――……


たとえば会いたいとか、
たとえば話したいとか。

特に何があるわけじゃないけど、
ちとせが使っていたティーカップを眺めてみたりだとか。

彼女の好きだったフルーツオレを買ってみたりだとか。
…僕には甘すぎて、
飲めやしないけど。


――――――――……


たとえばバラそうかなとか
たとえば電話したいとか。

特に何があるわけじゃないけど、
きょんが持ってた鉛筆と同じものを使ってみたりだとか。

彼の好きだったブラックコーヒーを買ってみたりだとか。
私には苦すぎて、
飲めやしないけど。


――――――――……


未練だなんて気持ち悪い。

なんで一人の女の子に依存しなくちゃいけない?


五億人の中には、
きっと僕より強い興味深い女の子だっているのに。


五億人の中で、
たった一人、ちとせと呼べる君。
僕が名前で呼べる君。

僕のこと、誰より近くに
考えてくれた君。


…いまさら、
気付いたって遅いって。

誰か教えてくれたら。


僕は迷わず君を、

突き放してやれるのに。


――――――――……


後悔だなんて最悪だ。

なんできょんじゃなくちゃダメなんだろう?


五億人の中には、
きっときょんより真っ直ぐでカッコイイ男の子だっているのに。

五億人の中で、
たった一人、私を知って助けてくれたひと。
私だけがきょんと呼べる人。

私のこと、誰より正直に
見てくれた人。


いまさら、
嘘だなんて遅いって。

誰か教えてくれたら。


私は迷わず貴方を、

忘れてしまえるのに。


……――――――……


こんな思いがあるだなんて君は知らずに、彼氏と遊んでるんだろうね。


放課後になって。

いつもなら君がくるから
応接室にいるんだけど、

君は来ないんだから
いたってしょうがない。


そう思って学校を出た。


校門で誰かを待つ少女がいて、僕はちとせのこと以外あまり考えていなかったから、素通り。

「き、きょん…」

だから声を掛けられるまで分からなかった。


「…ちとせ」

君だなんて。


「は、話があって…」

いつもと違っておとなしい君。

ああ、声を聞くのなんて
何日ぶりだろ。


「…うん、…」

僕も話したくて、丁度いいやと彼女の手を取った。


……――――――……


「か、彼氏が出来たって言ったでしょ?」

「…うん」

彼女が、自ら話しだしたこと。
彼氏だとか彼女だとか、
聞きたくなかった。

「あ、あれ実は…」

「いいよ、もう」

聞きたくなくて、彼女の話を切った。

ごめん、素直じゃなくて。

「…僕はちとせがどうしようと、関係ないから」

「う、ん…」

「勝手に群れててよ」

「………うん」

まだ春前なのに澄み切った茜空が、憎らしかった。

ふたりでぽつぽつと並んで歩く僕らは、今だけは僕のものになっているんだろうか。

「…………、」

彼女が隣で嗚咽を上げ始めて、泣いたのだと分かる。
でも僕は隣を見ない。


だって僕には、
君の涙を拭える資格がないから。
(早く彼氏のとこにでも行って、泣き止めば。)


「…ごめん、ねっ」

「…別に、君は何も悪い事してないでしょ」

その言葉が、まさしく僕には関係無いと言ったようで、ひどく胸が苦しい。
痛い。


「…う、嘘吐いちゃ、て」

「だから僕には関係な…」

もうこれ以上聞きたくない。彼女と会うのもこれで最後だ。
と、思った刹那に、

………うそ、だって?


「な、なに、言ってんの」

「…だから、嘘、ごめんなさぃ、って……」

尚もヒックヒックと泣く君に、本当に何を言っているんだろうと思った。


グイッと彼女の手を引いて、路地裏に入った。
道端じゃ落ち着いて話せない。


「…うそ、って何、」


「…ふ、ぇ?」

何を今更、って顔で見上げてくる君。(僕、いつの間にこんなに彼女より高くなったんだろう。)

涙で鼻が赤い。


「だ、から…彼氏が出来たって、嘘……」

彼女が申し訳なさそうに言うのを聞いて、
僕は我慢できなくてちとせの顎を持ち上げた。


……こんな、
恥ずかしいこと…。


一瞬ためらう気持ちがあったものの、
僕は自分の唇を彼女の唇と重ねた。


「…んっ、」

これは殴られるんじゃないかと身構えていた君に、
優しくもう一度。


まさか僕が、
僕から誰かにキスしたり
する日がくるなんて。


あんまり初めての事が多すぎて、きっと真っ赤になっているであろう僕の顔を、彼女の肩越しに隠した。

抱き締めれば伝わってくる泣いたとき独特の震えが、ちとせを余計に小さく感じさせる。


「きょ、きょん…っ」


「…だまって」


尚も強く抱き締めれば、僕の腕のブラウスにしがみ付く彼女が、途方も無く愛おしい。


「今から、言うこと。すぐに忘れるって約束して」


「…え?」

「はやく…、」

「う、うん…」

今更で、ごめん。
遅くなって、素直になれなくて。

強い僕が好きだと言ったから、こんな余裕ない僕は、見せたくなかった。

真っ直ぐな僕が好きだと言ったから、こんな素直じゃない僕にはなりたくなかった。

今更、だけど。

「…ちとせ、好き」

なんの上手な言葉も、素敵なシュチュエーションもなかったけど。
僕にはこれで精一杯。

ちとせ、君には…

ちゃんと届いただろうか。


「…き、きょん、」

一度彼女を腕から解放して、互いに顔を見合せる。

このドキドキが、
せめて君に伝わればいい。


「私はずっと…きょん一筋だよ…っ」

まだ涙はポロポロと出てくる。
頬を伝っては顎に流れていくそれを、僕は指で拭った。

再び、キスをする。


恥ずかしいなんてどこかに行ってしまって、

今はもう、
君しか見えない。



遠回りしても行き着く場所は、
願わくばまた、
君の所であってほしい。


――――――――……


君の他に大切なモノなど…




continue…

あーららら!!!
とうとう両思い出たー!

はい、出ました。うん。

ね、そうですね。

また両思いのカップル小話でもチマチマ書いていけたら嬉しいです!

何かありましたらこちらまで……!



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