執事雲雀(完) クフフのフ〜 「クフフ…」 私たちはまだ、国語準備室で立ったままだった。 骸くんのオッドアイが怪しげに光る。 「な、何が目的…?」 ピラピラとひらめかせられる写真を見ながら、内心、気が気ではなかった。 パパにバレたら? 学校で知られたら? 雲雀は解雇? 私は? 骸くんはどうして? 不安と焦燥が頭を過る。 「目的、ですか?」 骸くんはニヤリと笑って、ピラピラさせていた手を止めた。怖い。 あぁこんな時に限って足がすくんで、何もできないなんて。 (だから私には雲雀が必要なんだって思うのに。) 遠くの方で、始業ベルの鳴る音が耳障りだった。 彼の言葉を待つ。 緊張にも似たドキドキが全身に伝染したようで、指先までがドクドクと鼓動している。 「そう、ですねぇ…」 うぅんと考え込む仕草。 早くしてくれ。 いつまでこんな、気味の悪い不安を背負っていなくてはいけないのか。 彼が口を開く。 「とりあえずはデートですかね。」 「………は、ぃ?」 なに、何だって? でーと? デート、Date…? デザート? 「な、何、デートって!」 私は憤慨した。 デートって何よ!? 「え?デートですか?日時や場所を決めて異性と会うことですよ。」 クフフ、そんなことも知らなかったなんてウブなんですねちとせさんて。 「ち、ちがう!デートの意味じゃなくって、なんでデートなのかってこと!」 デートの意味くらい知ってるよ! ムキになって言い返す。 クフフ。知ってて意地悪く笑う骸くんは卑怯だ。 「証拠写真は全部で三枚あるんです。」 この一枚を含めて、他に二枚。 「……、」 そんなに、撮られていたのか……。(え、待って。盗撮ってプライバシーの侵害で訴えられないか?) 私はぐるぐると思考を巡らすが、しかし裁判をしたって私と雲雀の関係を露見するにしかならない。 写真は三枚。 「ちとせさんがデートしてくれたら、この写真をお渡ししますよ。」 骸くんはまた写真をピラピラさせる。 …つまり、骸くんの出す条件ひとつにつき、写真一枚と交換…ってこと…? 「クフフ。さすがちとせさん。頭の回転の早い人と話すのは楽しいです。」 骸くんお得意の読心術やら。 (雲雀と彼はすごく似てるのに、どこかが決定的に違うんだ。) 「他の、条件は?」 もうこの際だ。 すべて聞いてしまった方がいい。 私は彼に先を促す。 デートくらいなら、まぁ、いいかと思う。 「それを教えてしまっては、面白くないでしょう?」 お楽しみは最後まで取っておくものですよ。 (…なんて、骸くんは好きなもの先に食べちゃうじゃないか!) と、言い掛けたところで、運悪くタイミング悪く、準備室のドアが開いた。 「あっ、お前ら、何してんだっ!?」 …担任の武内先生。 こんな薄暗いところで二人っきりなんて、いかがわしい事してないだろうな! 「クフフフフ…」 「……。」 初めて他人に煮え繰り返る殺意を抱いた。 あるわけない。 骸くんが「遠山先生に頼まれた資料を準備室に戻しににきていたんです」とか何とかうまく言い訳てる。 私は無言のまま、準備室を後にした。 …先生から逃げて、そのまま教室へ戻る。 ああ早く、授業が終わればいい。 「あ、ひとつ言い忘れていましたが。」 骸くんに呼び止められる。 まだ何か? 「くれぐれも、雲雀くんには言わない事です。」 でないと、彼には余計な心配をかけることになりますよ。 …骸くんは笑った。 「………。」 私はもうまともな思考などなく、ただ茫然と教室に帰るのだった。 デートは来週。 ――――――――…… やっと、面白くなってきましたね。 continue… と、いう感じですが。 いかがでしょうか? 大丈夫です? こんな感じで進んでいきます。骸くん、当初は予定していなかった程の活躍ぶり!やはり骸くんは腹黒いのが一番ですね! ではまた次回! 誤字脱字批評はこちらまでどうぞ! [*前へ][次へ#] [戻る] |