執事雲雀(完)
突然。
「………クフッ」
「…、おはよー…」
「…クフ、おはようございます」
…骸くんがひとり、校門でニヤニヤ。
おっそろしいくらいに澄み切った空は冬みたいに高くて、やっぱり冬みたいに少し寒かった。
…「くふっ」とかいう奇妙な笑いを浮かべながら、骸くんは優雅に手を口元に持っていく。
私はそのまま通り過ぎようとしたけれど、まさか。
骸くんの視線の先には私がいたわけで、嫌が応でも目が合ってしまえば逸らし難い。
「クフフフフ…」
「………、」
尚、彼は私をみて笑い続ける。
どこを見ているという訳でもなく、しいて言うなら、全体を眺めている感じ。
彼の視線は独特だ。
…朝、珍しく私の家に来なかった彼。
だから今日は珍しく早く登校できたのだ。
何故だか雲雀はそれに、悲しんでいるような怒っているような、困惑の顔をしていたけれど。
骸くんが来なかったのは、きっと調子悪かったのかな、と思っていたけれど。
「クフハッ」
「…ぅゎぁ…」
…彼は万更でもなく元気そうだった。
「クフハハハハ…!」
どうすればいいんだろうか。気持ちわるい。
理由を聞いてもいいんだろうか。(いや、何だか嫌な予感がする。)(…そしてその悪い予感は、大抵当たるもんだ。)
「ど、どうしたの?骸くん…?」
一応、聞いてみる。危なくなれば赤いボタンがあるから大丈夫。大丈夫。
「クハハ!教えますよ」
校門に寄りかかっていた骸くんは格好よく私の方に歩いてきて、手を差し出した。
「行きましょう?」
「…え、う、うん…、」
とりあえずは手を取って、彼についていってみよう。
―――――――――……
連れて来られたのは、意外にも普通な国語資料室。
先生たちが時々きて、物置みたいに使ってるところ。
(これなら何があっても、大丈夫だ。)
「で、どうしてあんなに嬉しそうだったの?」
私は、まぁ一応彼から距離を取って、ドア近くに往生。
骸くんは向かいのデスクに腰掛けて、まだクフフってしてる。
「ちとせさんは、優秀な執事さんをお持ちですよね?」
彼はわざとらしく、そんな質問をしてきた。
「あ、うん。雲雀のことだね。」
自分で雲雀のことって言ったのに、やっぱり彼が執事だって事が分かって、ちょっと悲しい。
「そう、雲雀恭弥のこと、です。」
「うん」
「…クフフフフ。」
「ど、どうしたの?やだ、早く教えてよ」
何となく、怖い。
まさか、まさか。
なんで、私にわざわざ、
雲雀の事なんて。
彼は…、骸くんは、
もしかして。
「禁断愛…。なんて、ベタですよねぇ。」
「…っ!」
やっぱりやっぱり。
…なんて事。
知ってたんだ、知ってたんだ、私たちの関係を。
き、キスしたり一緒に寝たり。手つないだり…。
どうしよう。
パパにばっかり気を取られてて…、肝心な人に気を使ってなかった。
「いいんでしょうか?執事とお嬢様が…そんな関係にあるなんて。」
「………、」
「クフフフフ。お父様が知られたらどうお思いになられるでしょうね…」
「……、む、骸くん…」
どうやったらいい?
ああ、このままなら逃げられない。
逃げたって、きっと逃げた意味なんてない。
これは、否定、したほうがいのか。
「何を言ってるか、分かんないよ、骸くん…」
「クフ。否定するんですか?彼を守りたいんですね」
「ちがう、だから、雲雀とは、何もないよ…」
声が震えそう。
だから、雲雀が、「君はすぐ何でも顔に出る」って言うんだ。
「…証拠写真、見ますか」
「えっ」
私はそれ以降、声が出せなくなった。
…彼が、はっきりと。
長くて細い指でつまみ上げた写真には、はっきり。
私と雲雀が、同じベッドで寝ているところが収められていた。
「む、骸く…、」
「クフフフ。さぁ、どうしますか?」
彼はまるで悪魔のように綺麗に笑って見せて、色違いの目を細める。
……はじめて、
彼が怖いと思った。
―――――――――……
とっくの前から…ね。
continue…
す、すいません!
甘甘路線で行く予定だったのですが…(@_@;)
急遽、二等辺三角関係に変更いたしてしまいまして!
低角にちとせ様と雲雀くん、それを鋭角から狙う骸くん設定……ぽい?
感じです!!
誠に申し訳ない。
骸くんから弱味を奪還した暁には、……まぁ。
そこはお楽しみ?で!
スローに進みますので、
甘路線ですが時々回想で骸くんと雲雀くんとの間を揺れ動く少女・ちとせ様!!
キャッフーン!!!
…すいません。
ではまた次回!
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