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執事雲雀(完)
クリスティーン







たとえば僕は。

ちとせの専属執事であり、彼女のプライベートを共にする良きパートナーであるけれども。


「あっ、おはようございます、ちとせさん!」

「おはよう骸くん!」


…そういわれてみれば、僕は彼女の学校生活を何一つ知らないわけで。

もちろん友人関係や交遊関係も知らないわけで。


「…今日、春休みじゃなかったっけ、」

「…あぁ、いらしたんですか雲雀恭弥」


だから何故、こいつがここにいるのか分からない。


「…いらしたんですかじゃないよ変態フルーツ」

「そっちだってフルーツじゃないですか!」

「ちょ、家の前で大声出さないでよ骸くん!」

「なに?僕がいつフルーツになったの。腐れパイン」

「君は生まれた瞬間からミカンです!」

「じゃあ君だって生まれた瞬間から変態南国フルーツなんでしょ」

「雲雀!言い過ぎ!」

いくら骸くんが奇跡のテクノカットで変態だとしても、変態南国フルーツだなんてウププそのまんまじゃん!

「ちとせさん、僕のことそんな風に見てたんですか……?」

「あっ、いや…」

「御託はいいよ死んで」

…ジャキッ

雲雀がトンファーを構えてしまう。
あああ、もう、今日は骸くんと二人きりでお話があったのに!

「クフフ、ちとせさん争奪戦ですか?」

…チャキン

骸くんがなにやらフォークみたいな3つに分かれた…えぇぇと、なんか棒!
を取り出す。

骸くんて案外野蛮なんだ……、なんて思う暇もない内に、二人の武器が合わさった。

ガキィィンだとか
ギリリだとか、
ガシュッだとか
キャンキャンだとか…


え、キャンキャン?


「…あ゙ーッ!」

見れば私の、大事な大事なクリスティーン・シュモグルフちゃん(プードル)が引きつった態勢で怯えているではありませんか!


「うわわっ、やだ!クリスティーン・シュモグルフちゃん!」

私は、それこそ顔面蒼白になって瞠目した。


ガキィィン!
キン、ガシュッ!
ゴォォォッ、ビュンッ!


「す、ストップー!」


あまり大きな声ではなかったはずだけれど、二人は瞬時にピタッと止まってくれた。
(まさか止められるのを待ってたんじゃないよね。)

あわててクリス(以下省略)ちゃんの元へ駆け寄り、抱き寄せた。
ああ可哀想に、この賢くて小さな生き物がこんなに震えてしまって…。


横で、「ちとせがやめろって言うならやめるよ」だか「ちとせさんには嫌われたくありませんからね」だか何だかが聞こえたけれど、まーったくそんなの関係ない。


「ふ、二人とも最低!」

ぎろっ、と(あんまり効果ないけど)二人を睨んで、
涙が出そうな目を唇を噛んで我慢した。


まさか屋敷が壊されるのも(職人さんに悪いから)嫌だけど、生物に直接被害を与えるなんてもっての他!!


二人のいがみ合いなんて見たくない。
大の大人が何してるんだ。


抑えきれなくなった涙が、ポロポロと頬を伝う。
泣いてしまうなんて、名犬ラッシー以来じゃないだろうか。


「ちとせ…」

「ちとせさん…、」

彼と骸くんはお互いに気まずそうに顔を見合せ、困ったように眉を寄せた。


まだ震えるクリスティーン・シュモグルフちゃんの背中を擦り、涙で濡れた毛を撫でる。

二人は武器をしまい、それぞれ私の両脇に、私と同じくしゃがみこんだ。


「ちとせ、ごめんね」

(だって君が、六道骸なんかと仲良くするから、)


「ちとせさん、乱暴してしまってすみません。」

(でもそうしないと、ちとせさんとの約束を果たせないと思ったんです。)

互いに互いの言葉で謝罪し、しかし言い訳は口にしなかった。
何故ならそれが、二人の守るべきルールだからである。

雲雀は背中を、骸くんは頭をなでなでしてくれて、私はすっかり落ち着いてきた。


「…クリスティーン・シュモグルフちゃん…、」


(ちとせ、でもごめん。やっぱりその名前は趣味悪いよ…。)

(…え、クリスティーン・シュモグルフ!?ば、バースの一番鳥と同じ名前…)


二人はそれぞれに思う事があったけれど、やはり二人とも守るべきルールのために何も言わなかった。


「ごめんね、もうちとせの前では六道骸と戦わないから」

「…僕も、雲雀恭弥とは男の戦いがしたいです」

「……うん。ありがとう」


私はやっと落ち着いてきたクリス(以下省略)ちゃんを庭に放し、骸くんを屋敷に招き入れた。

「お茶、飲んでいってね骸くん」

いい葉が入ったの。
美味しいケーキもあるよ!

まだ少し濡れた目元を擦りつつ、私は雲雀に開けてもらった玄関の扉をくぐる。


「ちとせ、濡れタオル持ってくるから擦っちゃだめだよ」

「はーい!」

「クフフ、やっと二人きりですね…」

「…やっぱり他のメイドに頼もうか」

ちとせの身の危険だ。



…やっと庭の桜が膨らみはじめた、午後の事だった。



「…そういえば、ちとせさんの言っていた話したい事って、何だったんでしょうか…、」




――――――――……



今日は不覚にも、六道骸と馴れ合ってしまった…




continue…

えー、どうも!
お久しぶりです?経営主チロでございます!

今日ですねー、なんと!
アンケートを見てびっくりしました!
ついこの間まで60以下だった票数が一気に100まで跳ね上がり!

こいつァいけねェ!
と、大急ぎマッハで制作致しましたのがこちらでございます。
誤字脱字駄文。
ありましたら申し訳ありませんがこちらまで。



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あきゅろす。
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