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執事雲雀(完)
むくろとデート!?



私はとうとう、おかしくなってしまったのかもしれなかった。

「あ、ちとせさん!おはようございます」

「え…あ、おはよ、?」

幻覚が、見えるようになってしまったんだもの。
幻覚の彼はクフフ、と笑っている。

「まだ着替えてないんですか?くふふ、寝巻き姿も可愛いですがね」


…どうやら幻聴までしだした。

でなければ彼が、こんな変態まがいの発言などするはずがない。(私の、彼に対するイメージが間違っていなければ、の話だけれど)


「さ、ボーっとしないでくださいよ。今日は約束の日でしょう?」


…彼は、今で言うカジュアル…だろうか?制服姿じゃない彼を見るのは、なんだか変な感覚ではあるけど。とにかく格好良いい…。

(あれ、なんていうの?ネクタイ?とかきれいに結ぶんだなぁ骸くんて)


「…ん…約束、?」

彼の格好に気をとられていて、骸くんの話なんて耳に入ってなかった。私はもう一度聞きなおす。

「そうです、約束したじゃないですか。今度、二人で何処か行きましょうって」

「……あー。」


間延びした声を出しながら、思考を巡らせる。
そういえば、そんなこともあったっけなぁ……。(骸くんが遊びに来た、あの日のことだ)


「ね?今日はその日ですから、早く行きましょう!」

彼に早くと促されて、私は屋敷へハイハイと戻る。

冬だというのに、私は寒い玄関で、しかも寝巻き一枚でペチャペチャと話していたのだ。

身体が冷えてしまってしょうがない。


しかしながらまぁ、よくこの玄関まで来れたものだなぁと思う。

正門には監視の警備員さんがいるし、私たちの許可がないと、訪問者は玄関までたどり着けないのに。


だからこそ、彼がいきなり玄関のインターホンを押したときには焦ったのだ。

誰だって朝、いきなり格好良いクラスメイトが訪ねてきたら焦るはず。


と、


「ちとせ?だれか来てた?」

厄介なやつに見つかった…。


雲雀は朝食の準備をしていたはずだから、骸くんの訪問なんてもちろん知らない。

…うーん、雲雀、前に骸くんが遊びに来たときも機嫌悪かったしなぁ……


「う、ううん!誰も来てないよ!朝ごはん食べる!」

とりあえず、骸くんと出かけるのは秘密にしておこう……。



――――――…


正門を使うと警備員さんにバレるので、裏玄関で待ち合わせた。

「!ちとせさん、すごく可愛いですっ」

私の出てきたのを見て、キャッキャとはしゃぐ骸くんに、彼は本当に骸くんなんだろうかと疑問に思う。


「ん…なんだか、下半身がどうにかなりそうです………くふふ、では行きましょうか…」



……え?ごめん、セリフの前半部分にヘンタイいなかった?
なに、下半身?

「ちょ、骸くん…!?」


――――――……


ちとせが部屋に閉じこもってから、もう2時間ほど経つ。

苦手の英語を克服するとかで、「部屋に絶対入ってこないでっ」……らしい。

基本的にちとせの命令なんて聞かないけど(お茶いれてとか、おやつほしいとか、そういうワガママのことさ)、今回はちゃんとした命令のようなのでそれに従う。

はぁ、まだ2時間しか経ってないのにちとせの顔が見たい…なんて思う僕は、一体ちとせをどうしたいんだろう……。


―――――――……

「い、たい…っ!…痛いよっ、うぅっ」


「く、ふふ…これを頑張らないと、楽になれません、からね……」


「う…っ、アッ…うぁッ……やだぁっ」


―――――――……

ちとせが部屋に籠もって、もう6時間以上が過ぎてる。

いくらちとせでも、ちょっと頑張りすぎじゃないの?

特にあの堪え性のないお嬢(あ、この呼び方久しぶりだね)が、物音ひとつ立てずに勉強だなんて……




(そういえば、まだおいしいチョコレートが残ってたはず…)

紅茶を差し入れるという口実を元に、僕はちとせの部屋に足を進めた。


――――――……


「今日は楽しかったですっ!」

「うんっ!あれ、途中からすっごい気持ちよかった!」

「クフフ…ちとせさんは初めてでしたもんね」



「うん、また足マッサージ行きたいなぁ!」

「そうですねぇ、そうしましょう!」

「やった!ありがとう!」

―――――――……

「ただいま〜…」


小さく、帰宅の挨拶を呟く。
もちろん誰にも聞かれたくないけど、やっぱり習慣には逆らえない。

私専用の秘密通路を使って、自室の窓から部屋に入る。


よかった!
部屋には誰も入っていないようだ。
まだ誰も気付いて「おかえり、ちとせ……」

た……。


よりによって、一番気付かれたくなかった雲雀に。


「あ…た、ただいま…」

雲雀がものすごく怒ってるのが分かる。
(彼って、極限に怒るとブリザードの如く冷める人だから………)

「ご、ごめんね!…雲雀に、心配かけたくなくて…」

そう言い訳じみた事を言えば(でも本当の事)、知らない方が余計に心配だよ、と目で返されてしまった。

「僕は、勝手に外出したこと怒ってないから」


しかしながら予想外の回答に驚く。あの、誰よりもルールに厳しい雲雀が。

「ホント!」



「…でも、六道と会ってたことは怒ってる」


「あぅ……」


なんだ、肝心なとこはバレてるし。

「ひばりー、ごめんね…」

「……………。」


「機嫌直してよぅ!」


「…………………。」


「ちゅうしてあげるから!」

こうなったら強行手段。ちゅうでも肩もみでもなんでもしよう!


「………だったら、さ」


「ん?何でも言って!」


「……ここが、いい」


そう雲雀が照れ気味に指差したのは間違いなく、私のくちびるだった。

「え、…ここ?」

びっくりした私は、咄嗟に何を言いだしたのかと考えをまとめる。


「うん、ここがいい」

雲雀は私に歩み寄って、ぐぃっと私の腰を引く。

(うわ…っ、わわわっ!)

その動作があまりにも自然にされたものだから、妙に雲雀を男の子だと意識してしまって、カァッと頬が熱くなる。

「ちとせ」

つつっ、雲雀のきれいな親指にくちびるをなぞられて、今からする事を余計に思い知らされる。


「目、瞑って……」

私が目を瞑れば、それは…き、きすしてもいいって事になるわけで……。



いつも以上に真剣で真っ直ぐな瞳の雲雀に、ああ、ドキドキすると、自然と目が潤んじゃうんだ…と頭の隅で考えながら。

私は、きゅうっと目を閉じた。



――それはキスまでの、 もどかしい時間…――




continue…

はいぃ、長っ!!
って思いませんでした?

ですよね、長いです。

なんなの、この妙に長いクセに中身スッカラカンの物語は!
てかんじです。

ではまた次回!

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