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執事雲雀(完)
悪かった


久々のお買い物!

どんな富豪だって誰だって、とにかく女の子は買い物が大好き!




私にだってそれは当てはまるよ。


お洋服にお菓子、文具に家具!
あーもう、全部ください!






………

……………

「だからといって、これは買いすぎでしょ」

「あ、あはは……」


雲雀が抱えた荷物は山のよう。

目の前が見えなくなるくらい買った品物は、どれも可愛らしいピンクのラッピングがされていて。


ふたりで持っても両手いっぱいのそれを運ぶために、人通りの少ないVIP用の駐車場へと移動。



ついつい、あれもこれもと言っているうちに買いすぎてしまった。

こんなに買うなら他の執事も連れてくればよかったんだけど……。

「ちとせ様に付いていくのは、僕だけで充分です」

…そう言い張られてしまっては仕方がない。


パパも困った顔をしてたけど、雲雀の熱心さに負けて承諾してくれた。


ただ…

「どうしてそこまで、二人で来たかったんだろう?」


ふと疑問に思ったことが、思わず口をついて出てしまったみたい。



「…え」

真っ赤になった雲雀をみて、驚いた。


「な、何で赤くなんの…」


「だ、だって。ちとせが変なこと言うから…」


「私、変なことなんて言ってないもんっ」


ふたりでゴチャゴチャと言い合いをしていたとき、不意に後ろから人の気配を感じた。


「…ん?」


振り返ったと同時にはもう、

私の顔に太いバットが振り下ろされて……







ゴキャッ!!


「つッ、ぅ……」






ただ、
痛みは、感じなかった。

うめき声だけが微かに聞こえて、そろりと目を開ける。



「…!ひ、雲雀っ!?」

そこにいたのは、誰かの攻撃によって、負傷していた雲雀の姿。

荷物を持っていたために、反応が遅れてしまったのだろう。



使い慣れたトンファーを出すことも出来ないままに、その腕にバットを直に受けてしまっている。

あの我慢強い雲雀が顔を歪めているから、それは相当な痛みを伴うはずだ。



こんなことをするのは誰なの、と相手をみると、犯人も先ほどの一撃にかなり力を使ったのだろう。

はぁ、はぁ と肩で息を継ぎながら眉を寄せていた。

どうやら男のようである。


どうしたらいいのか分からない。

なにせ初めての事なのだ。
雲雀を気遣うこともままならない。

「ひばり、雲雀…っ」


雲雀を何度も呼んでいると、犯人も回復を済ませたのか、また襲いかかろうとしてる様子が見えた。


初めての経験に、体を恐怖が支配する。

すくんだ足がバランスを崩し、冷たいコンクリートへと座り込んでしまった。

すると
その強張った肩を、誰かが優しくさすってくれたのがわかった。

(!…雲雀……っ)


押さえていた腕を離し、おもむろにトンファーを装備する彼。





眼光は先ほどまでの優しい目ではなく、

それは狩る者の眼。




「君、だれ…?」


口調が、明らかに変わっていた。

ぞくり、と背骨が波打つような低い声。



「だっ、誰だっていいだろ…っ!!」


犯人も冷静を装うが、明らかに隠せていないその焦り。


「ふぅん…?」

雲雀はまるで、獲物との駆け引きを愉しむ猛獣のように、妖笑を浮かべる。


「…だそうだけど、どうするちとせ?」

「…え?」



ガタガタと震えるのでいっぱいいっぱいだったちとせは、突然の振りに答えられない。


「こいつ…咬み殺しちゃっても、いい…?」


いつもの「咬み殺す」とは違うニュアンスをもったその言葉に、彼女は雲雀が真剣にキレてしまった事を知る。


ここで駄目だと否定したら自分に降り掛かってきかねない。

「理由聞いてから…咬み殺して、ね」

精一杯に絞りだしたセリフに、雲雀は嬉しそうにクスリと笑う。


「了解…」















………………………………

「あの犯人、運が悪かったねぇ」


屋敷に戻って紅茶をすすりながら、ちとせはしみじみと言い出した。


「まぁね、僕の邪魔したから」



結局、犯人はあまりの恐怖にあの場で全てを自白。

なんとパパを恨んでた単独スパイだったの。



もちろん犯人を、私の前で咬み殺すような野暮なことはしなかった雲雀だけど。

家に帰って 怖がる私を預けたあと、彼特注の黒の燕尾服が真っ赤になるまで咬み殺してきたらしいから、やっぱり雲雀って強いなぁと思う。


「邪魔って、買い物を邪魔されたのは私だよ…?」

「………」

ちとせはそうやって呑気に言ったけど、やっぱりあの犯人は僕の邪魔をしたんだよ。



「腕、大丈夫だった?」

「全治2週間ってとこかな」

「うわぁ、あの犯人っ咬み殺してやるーっ」

彼女は僕の口癖を真似して、右手で拳を作った。
(僕の怪我を心配してくれるなんて、ちとせはやっぱり可愛い)



犯人はちとせが咬み殺すまでもなく、めった打ちにして再起不能だと思う。

君とのデートを、邪魔されたら怒るでしょ?




continue…

はい、ね、うん。

なんかなぁなんか……。

ぐだぐだスランプです…。

ではまた次回!

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あきゅろす。
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