ひぐらし*うみねこnovel その事実は柔らかい笑顔(紗朱) 重苦しい。 あたしは煮えきった空気から逃れる為に固い扉を押しあけた。 何で大人はお金の話ばかりなんだろう。 もっと他に話す事はないんだろうか。 心のもやもやと同時に息を吐き出した。 さて、これからどうしよう。 大人達は食事という時間が無ければきっと夜までだって話し続けるだろう。 この屋敷は広い。 それがあたしの唯一の救いだった。 だって離れれば離れる程あの空気から逃れられるんだから。 「お嬢さま!」 ふと届いた声に足を止め振り向くと、そこにはあたしなんかよりずっと女の子らしくてどんな服を着てもきっと、いや絶対可愛いに決まっている使用人の彼女がいた。 「紗音……っどうして」 そうだ。 どうしてこんな所にいるのだろう。 彼女は使用人で今だって大人達の相手をしてないといけないんじゃないだろうか。 「お気分が、優れないようでしたので」 追いかけてきちゃいました、と彼女ははにかむ。 あたしなんかの為に? 後で怒られるかもしれないのに? 「……ありがとう」 「いえ」 「紗音が来てくれたら、すごく気分が良くなったよ」 「はい」 彼女は崩すことない笑みを向け頷いてくれる。 あたし1人の為に追いかけてきてくれた。 その事実が何よりも嬉しくて、あたしは彼女と2人鮮やかなバラに囲まれていた。 あとがき ちっとも笑みを崩さずにただ朱志香の為だけに追いかけてきたとかいうシチュに萌えます(´`*) 090621 [*前へ][次へ#] |