[携帯モード] [URL送信]

帝白物語 第1章
thought

私はとりあえず、ずっとずっと考えてた。


…というより思い出そうと努力していた、と言った方が正しいだろう。


亜久津の事ね。




うーん…。





試合が終わってコートが片付けられている最中私はその辺にあるベンチに座って休まされていた。


もちろんテニス部の人達にね。

みんなかなり過保護。

だってあの手塚が「お前は休んでろ」だよ?


あの部長がだよ?

ちょっと鳥肌が立つよね。

それでもって菊ちゃんなんか「太陽〜!なに突っ立ってんの?座ってなきゃダメだよー」とか言われたよ。

菊ちゃん本当に可愛いんだから。

海堂は優しさなんだろうけど「倒れられたら邪魔なんで」だよ…。

優しさ分かりにくいわっっ!

最近は私を敵視しなくなったからそれだけでも有り難いんだけどね。


まぁそんな訳で丁寧に屋根までついたベンチに座ってるって事。


…それにしても暇過ぎる。

だから私は亜久津の事を思い出そうと頑張ってたの。

それなのに私の脳はすぐに物事を思い出せる程優れていなく、困難しているのが現実だ。


「…ねぇ、さっきから眉間にしわ寄ってんだけど。」

「………。」

眉間に指を当ててみると、確かにたくさんのしわが寄っていた。

それを伸ばそうと2本の指で広げたのは予想がつくだろう。

というかね、うん。

君失礼だよ、リョーマ君。


「ねぇアンタあの亜久津っていう人知ってるの?」

「…それが名前を聞いた事も無いし…知らないんだよねー。」



するとリョーマ君は私の隣に自然と座った。


…片付けサボってるんですか??


「…そう、サボってんの。」

「…私声に出してた?」

「うん、思い切り」

「……。」


私のコレどうにかなんないのかね。

それで、なんだっけ?

…確か、亜久津のことだったような気がする。


「…そう、それで?」

「亜久津ってやつは太陽先輩に負けたんだって。」

「…私に…?」


…何の話…?

私に負けた?

あのリョーマ君と対等に戦っていた亜久津に私が勝った?

全く覚えていない。

否、思い出せない。

「5年前だって。」

「……」

5年前…

亜久津…。


「名前は知らないけど…1人だけ思い当たるのがいるかもしれない。」

「…?」

リョーマ君もさっきの私の様に眉間にしわが一瞬寄っていた。

それも直ぐになおってしまったのが残念だが。


「それじゃないの?」

「髪型とか全っ然違うんだけど」

「え!?」

リョーマ君ナイスリアクションだよ。あんまり表情を変えないリョーマ君だからつい笑い吹き出しそうだった。


「んで、どんな感じ?」


…どんなんだっけ。
髪の毛はお坊ちゃんカット的な感じで、目はそのまんまなんだけど。


あ…それって同一人物か。


するとナイスタイミングなのか分からないが桃が私達2人の元へとやってきた。

「越前っ!お前もう式始まるぞ。」

「…チース。」

リョーマは渋々立ち上がり桃と二人で走っていった。

私に「ちゃんと座ってて下さいね」と言い残して。














1/4ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!