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SS
ACT9
俺は何故か橘さんの座る椅子の前でいつの間にか正座している。


橘さんは、自嘲気味に笑い、煙草の煙りをふっと吹き出す。


「………知ってんだろ?お前が未だに音楽やってんならさ。」


「で、でもっ!!プロ目指すのは辞めても音楽は………」


お兄さんは組んでいた足を組み替え、俺の視線から逃げるようにそっぽを向く。


「……………やってないよ。もう辞めたんだ。」



……………………………………



……………………………………………………。








わかっていたけど

わかっていたけど、







てゆーか、俺が高校卒業して上京して、お兄さんのバンド活動を見守って、それからお兄さんのバンドの上手くいかなかった噂を聞きながら、今の今まで取ろうと思えば取れた連絡を取らなかった理由は、そういうことだったんだ。

「もしかして………

いやいや違う!そんなはずない!お兄さんはきっとお兄さんのままだ!」

そう思い続けたくて。

どこかで分かっていた、事実を受け止めたくなかったから。


そして、自分が音楽を続ける原動力がそれだったから。



「…………なあ、光一。今日俺が此処に来たのは、思い出話をするためじゃない。

分かっているだろう?」



……………………………………………


そうだ。



そうだよ。

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