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一喜一憂
6
目が覚めると、見知らぬ部屋で寝ていた。
正確にいえば部屋のつくりはどの部屋も同じなので見知らないわけではないのだが


半身を起こせば、窓の外は、すっかり暗くなっている。
どれだけ寝たんだろう


あれ、俺なにしてたんだっけ
確か校長先生と密会してたと思うんだけど



ボケーッとしていると、部屋のドアが開いた。マシンガン抱えたテログループとかだったらどうしよう、と身構えたが、現れたのは久米さんだった。



「あ、起きたー?」


「久米さん、俺は一体」


「校長室の前でぶっ倒れたのはー、おぼえてるよな?」



無言で何度も頷く。

校長先生に心配してもらえたんだよな〜


貴重な体験だわ




「そのあと俺がここまで運んできて寝かしたんだけど、お前ずっと『こうちょうせんせぇ〜〜』ってうるさくてよー」


久米さんが得意げにいう。



ひぃ
…聞きたくない


「ついにはボロボロ泣き出してさ」

ちょうかわいかった、

と、言われた気がするが、気のせいだろう。



それよりも、次々と紡がれる俺の恥ずかしい話に血の気が引いていく。


久米さんとはいえ、先輩に迷惑をかけてしまった。

俺の人生で未だかつてない失態だ


「本当にすみません、ご迷惑をおかけしまして…」


恥ずかしさでうつむいた。


下を向いたまま、先輩の顔が見れない



「いや、そんな気にすることじゃねえだろ」


久米さんは軽く笑うが、俺には気にしないなんてムリ


寝てる間になんかやらかしてる確率が高い


そのまま顔を上げないでいたら、先輩がかがんで顔を近づけてきた。


近いな、と思った瞬間、熱い唇を重ねられ、ベッドに押し倒された。


抗議のために開いた口からすぐに舌が入り込んで、口内を好き勝手に貪られる。


久米さんの舌が熱いから、ふわふわして何も考えられなくなる


「っ、ん……は、」


「三浦、俺はさ」



久米さんは俺にまたがったまま、キスしてきたことには触れずに、滔々と話し始めた。



「三浦の世話できるっていうか、面倒みられるっていうのはちょううれしいの。全然迷惑とかじゃなくてさ、」



俺は久米さんが何言ってるかちょっとよくわかんなくて、ただ久米さんの顔を見ていた。



「俺はそれよりも、お前がずっと校長校長って呼ぶのが嫌だったよ。一応だけどさ、付き合ってくれる、って言ったじゃん」


「…でも俺も校長先生が好きだって言いましたよね」


「だからってさ、仮にも俺と恋人なわけじゃん?」


まあ、それはわからなくもないけれど



「寝言はしょうがなくないですか、ホントの気持ちが出ちゃうんです」


校長先生のことになると俺も止まらない。



相手は先輩なんだぞ!っていう声より、校長先生親衛隊隊長(自称)の声の方が俺の頭には響いてるから


「だって俺久米さんのこと何にも知らないし、そんなんで付き合おうとか言われても無理ですよ、いきなり好きになれません」


「…お前、結構ストレートに言うのな」


いいよ、といってまた俺の服の中に手を突っ込む。


脇腹を撫でられる感触にからだがぞわぞわした。


「ちょっ、久米さん…!?」


「いいよ、俺のこと好きにさせるって言ったろ」


身体からかよ、という俺の呟きは聞き入れられない


やめて、という意思表示のもと先輩の腕を抑えようとするが、現役チャラ男の久米さんには勝てない。


俺も最近やってないし溜まってるから、いいかなー、なんて


でも久米さんの顔は苦々しくゆがんでいた。


そんなに俺のことが好きなの?

変わってんな


身体を這いまわる俺のより太い指が、乳首をかすめる。

ドクリ、ときもちいい感覚が広がり、バカみたいに甘い声が出た。


「…っぁ」


俺の態度に気をよくしたのか、更に服をたくしあげ、胸に顔をうずめる。


久米さんは体温が高いのか、舐められるとじんわり暖かさが伝わってきた。


あ〜なにこれ


俺だってこんなの初めてじゃないし、セックスは男とも女とも結構したのに、心が痛い。


いいかな、じゃねえ

やっぱムリだわ


付き合うって言ったのは俺だし、俺が悪いのかな、久米さん、ホントに俺のこと好きなんだろうし


俺だって校長先生に告白しておっけーもらえたってのにほかの女の名前呼ばれたら泣くわ 



自殺する


そう考えたら久米さんのことがなんだか愛おしくなって、俺の胸をなめる男の髪の毛を撫でる。


金髪のふわふわした髪。俺とは全然ちがう。


俺が触ったのに驚いたのかこちらをびっくりしたようにみつめる。


「っなに、情けとかいらねえんだけど」


「いや、俺も悪かったな〜と思いまして」


「…なにそれ、俺のこと大好きってんじゃないんでしょ」


「まあ、そうですけど やっぱりすぐには無理ですよ」



そういうとまた嫌そうな顔をした。


「なんだか健気だなあと思って。ねえ、どうせ初セックスやるならこんな嫌な思いでやるのやめましょうよ」


一瞬考えるそぶりをして俺を訝しげに見る。



「もしかしてやりなれてる…?」


「そんなことないですよ、並です 久米さんよりは少ないと思いますよ」


「んなわけねえだろ、俺、」



一度目をそらしてバツが悪そうにまた俺を見る。


ん?と顔を見上げると、恥ずかしそうに口を開いた。



「俺、これが初恋でさ、セックスとか、ほんとに数えるくらいしかしたことない」


「うっわ意外」


おっと口に出しちまった

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