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一喜一憂
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「ねぇ、久米さんは俺のどこがいいんですか」

久米さんの反応がとても気になったので聞いてみた。

「言わせんの…?」

「別にないならいいです」

なんだろうこのひとおもしろいくらいにバカ?

「ないわけない!!」

きたきた。

「じゃ、どこですか」


急にもじもじしだす久米さんがとてもきもちわるい。

「え、あ…、っと、鼻とか?あっ真面目なとことか!俺みたいに顔だけで生徒会に選ばれたのと違くて、顔も良くて勉強もすごくて」


顔がよくて(俺はよくないけど)鼻が高くてまじめで勉強ができちゃうならだれもいいのかよ。


「あと年下だし、なんだかんだいって俺のことさん付けで呼んでくれるし」

「それ普通のことじゃないですか」

「え…っ」


あまりにも普通なことを並べられて意味が分からない。アンタ今までどんだけ虐げられてきたんだ。


あーねむい、死にそう。

最初、何の授業だっけ…。


眠すぎて、このまま眠ったら起きた時には死んでるんじゃないだろうか、死んでたら起きないか、そうか、とか思ってしまう。

まず校長先生に出してこなきゃ、
そう思い、急に立ち上がるとめまいがした。地面がクリームになってぐるぐるかきまぜられてるみたいだ。

思わず机につかまると、クリームのぐるぐるが頭の中に移動した。脳みそがババロアになってる気がする。きもちわるい。さっきのココアを吐きそう。

このまま俺はしぬのか?校長先生のために働いてしぬのか。さいこうのさいごだなぁ。


「みーちゃん、」

久米さんが俺を呼ぶ声が聞こえるけど俺は校長先生一筋だから。
机につかまりながら踏みしめて歩く。

「こうちょ、せん…せ」

校長先生に褒められたい一心で校長室まで来た。気持ち悪くて脳みそがババロアで、校長先生に俺のバナナを咥えさせたくなった。


「みーちゃん、大丈夫…?無理しない方が」

なんだ、ついてきたのか。

…息が苦しい。深呼吸をして、言葉を吐き出す。

「久米さん、今のおれは大丈夫ですか。ものすごく酷い顔だったりしますか。近づかれたくないぐらいな顔してますか。変なにおいしますか。声はきもちわるくないですか」

「大丈夫大丈夫。体調はだいじょばないっぽいけど」

体調なんてどうでもいい。

前髪を整えて、校長室のドアをノックする。


「失礼します。2年の三浦将生です。校長先生いらっしゃいますか」

「はーい、いますよー」

中から間延びした校長先生の声が聞こえる。癒されるなぁ。

ドアノブをひねり、校長室に足を踏み入れる。そこには椅子に座って読書中だった校長先生がいた。

「どうしたの、三浦君」


40後半となりすこし白髪が多くなってきた髪の毛、
目尻のしわ、
首のたるみ、
少しおしゃれを狙ったチェック柄の老眼鏡、
相変わらず細い手首足首。


綺麗だ。


「あっ…、あ、えと、先日の入学式の新入生名簿作り終えました。一応データ化したものを持ってきたのですが」

メモリを差し出すと、校長先生は受け取ってくれた。

「おぉ、え、本当にやってくれたのかい?悪かったねぇ、大変だったでしょう」

校長先生はそのままメモリを大事そうに抱え、また、「ありがとう」といった。

「いえ、校長先生のためなら、なんてことないですよ」

笑顔を浮かべ、真摯に受け答えをする。

「いやぁ、本当にありがとう。ごめんね、僕があんなこと言っちゃったから…」

「全然!気になさらないでください。僕も何分暇だったものですから」

嘘だ。生徒会はほかの人の分の仕事までしなきゃいけないのだから。

「では、失礼しました」

そのまま帰ろうとすると、校長先生に呼び止められた。

「三浦君!ちょっと待って、これ!これあげるよ」

そういって渡されたのは、洋菓子セット。
マカロンだとかフィナンシェだとか、クッキーだとか。
ご丁寧にリボンでラッピングまでしてある。

「え、こんな、受け取れません…!」
誰にあげるつもりだったのだ。もしや、だれか特定の人がいるのだろうか、それか校長先生自身がもらったのだろうか。

そういった暗い気持ちが浮かんでは消えてゆく。

「いやぁ、僕が食べようと思って買ってきたんだけどね、僕お医者さんに甘いもの食べすぎるなって言われてたの思い出して」

「あっそうなんですか、確かに、とりすぎはあまりよくないですね」

「だから三浦君にあげる、僕の好きなフィナンシェ入り。甘いもの嫌いだったかな?大丈夫?」

にこりとわらう校長先生。よかった〜〜^o^
考えすぎか〜

「大好きです、ありがとうございます」

フィナンシェが好きなんだ。

「よかったらまたここへ来てくれる?今度カヌレをいっぱい買ってきて食べるんだけど、一人じゃさみしいなと思って」

カヌレってなんだ!?
でもこれは…ふたりきり…!?マジで!?脈アリ!?

「ぜひ!ぜひお願いします」

「ほんと?やったぁ、うれしい」

「僕も嬉しいです」

その言葉は本心だった。満面の笑みが浮かんでいたと思う。

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あきゅろす。
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