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帰ろうとしたら、教室の出入り口に貴仁さんがいた。
「なぎ。今日俺んち来るだろ?」
久しぶりに見る貴仁さんは相変わらず格好よくて…。
ぼー…っと見惚れる。
もしかしたら、これが見納めかな、なんて思いながら。
「なぎ?用事でもあるのか?」
「ぁ…何も、無いです。」
「じゃ、決まりね。さ、帰ろ?」
なんだかすごく機嫌が良いみたい。
僕とやっと別れれるから?
貴仁さんはマンションに1人暮らしだ。
ご両親が海外出張されてるから。
当り障りのない話をして歩く。
人気のない所になるとこっそりと手をつないだり。
まるで付き合い始めた頃のようで、凄く嬉しくなる。
貴仁さんの家に着き、ドアを開けたら…。
「貴仁?早かったのね。」
あの女の人が…。
なんで?
なんでなんでなんでなんでなんで?
「あら?その子が渚君?」
僕の事も知ってる…?
貴仁さんが教えた?
今日はやっぱり別れ話?
2人が何か話してるけど、聞こえてこない。
頭が痛い。
「なぎ、どうした?」
貴仁さんの声も、顔を上げると女の人は部屋に入ったのか、姿が見えない。
「貴仁さん…。」
もう、無理です。
「ん?なんだ?」
胸が、苦しいんです。
「も、いいです。今までありがとうございました。」
それだけ言って、走りだす。
「え…?なぎさっ!?」
貴仁さんに呼ばれたけど、止まらない。
体育でもこんなに必死に走ったことがない。
早くマンションから離れたくて…。
あの2人から離れたい。
マンションを出た所で、腕を掴まれた。
「なぎさっ!!」
振り向くと、そこには貴仁さん。
掴まれた腕が痛い。
「なんだ、あれは?」
貴仁さん怒ってる?
「どういうつもりだ?」
何が…?
「どういう意味だ?」
何のことか分からない。
僕が黙っていると、抱え上げられ、連れ戻される。
「やっ!貴仁さん下ろして!」
戻りたくない。
でも、追いかけて来てくれたのが嬉しい…。
貴仁さんの部屋に連れ戻され、ソファに下ろされる。
あの女の人はいないみたい。
「渚、あれはどういうつもりだ?」
貴仁さんの顔が見れない。
「渚。」
「…貴仁さん僕と別れたいんでしょ?」
涙を堪えながら小さな声で呟く。
沈黙が苦しい。
「…誰がそんなこと言ったんだ。」
怒りを押さえてるような声。
涙が零れる。
「だって、貴仁さん最近冷たかったし…一緒に帰ってくれなっ…ふっ…。」
嗚咽が漏れる。
みっともない。
「うん。」
それなのに涙が止まらない。
「電話、すぐに…切っちゃうし、ひっく…あの女の人…誰っ?」
途切れながら、言葉を紡ぐ。
「渚。俺は渚と別れたくなんかないよ。」
優しく、抱き締められる。
「うそっ!あの人と付き合ってるんでしょ?」
「違うよ。俺の恋人は渚だけだよ。」
止めて下さい。
勘違いしてしまうから…。
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