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甘い日々
僕の誕生日以来貴仁さんは毎日のように教室まで迎えに来て一緒に帰ってくれます。

今日はバレンタインデーで。

貴仁さんは格好いいからチョコレートいっぱい貰ってるんだろうな、と少し憂鬱になる。

でも、大丈夫。

制服の下に隠れているペンダントをぎゅうと握りしめた。

誕生日に貰った指輪は、恥ずかしいのと校則を気にして僕はペンダントに通して身につけている。

貴仁さんは堂々と薬指につけてるみたいだけど…。

怒られないのかな…?

「なぎー!帰るぞ!」

僕がぼんやり考え事をしてる間に貴仁さんが迎えに来てくれて。

僕は鞄を持って、急いで貴仁さんの所へ行った。

今日は貴仁さんのお家に遊びに行くんだ。

その時に昨日頑張って作ったクッキーを渡すつもり。

甘いのが苦手な貴仁さんに合わせて砂糖は控えめにして。

お母さんと一緒に作ったの、喜んでもらえるかな?

鞄の中にソッと入れたクッキーを早く渡したい。

渡した時、貴仁さんはどんな反応をするかななんて考えて僕は楽しくなった。

「なに?嬉しいことでもあったの?」

「まだ内緒です。」

今すぐ渡したいのを我慢して。

貴仁さんと並んで校門に向かった。

そしたら。

校門には他校の女の子が数人いて。

なんとなく嫌な予感がする。

校門を出たときに女の子達はきゃーって歓声を上げたかと思うと。

貴仁さんに向かって皆が小さな紙袋を差し出した。

「これ、受け取ってください!」

「私のも受け取ってください!頑張って作ったんです!!」

やめて。

嫌だ。

貴仁さんは僕のなのに!!

そう言ってやりたいけど喉がカラカラに渇いて声が出ない。

それに。

貴仁さんも女の子の方がいいかもしれない。

男同士なんておかしいもん…。

もしかしたらここで別れを言い渡されるかもしれない。

どんどん悪いことばかり浮かんできて僕は泣きそうになった。

「悪いけど、受け取れない。」

鞄をギュッと握りしめて涙が零れないように堪えていたら貴仁の声が聞こえて。

それに女の子たちは納得がいかないのか貴仁さんに文句を言ってる。

「どうしてですか!?」

「別に受け取るぐらい良いじゃない!!」

「俺好きなやついるし。」

ヒステリックに叫ぶ女の子達を冷ややかに見下ろして。

貴仁さんは。

「こいつを悲しませたくないから。」

そう言って。

僕の肩をつかんで引き寄せたかと思うと。

チュッ。

おでこにキスをされた。

「こいつが俺の恋人だから。」

「た、貴仁さん!?」

まさかこんな人前で堂々と宣言されるなんて。

「そう言うことだから。」

僕や女の子達がびっくりしている間に、貴仁さんは僕の手を掴んでズンズン歩き出した。







「なぎ?」

「えっ!?あっはい!!」

手を繋いだまま歩いていると貴仁さんが心配そうな顔で僕をのぞき込んでいた。

「イヤだった?」

一瞬何のことか解らなかったけど、多分さっきのことだろうと思って僕は頭を横に振った。

「う、嬉しかった、です……。」

まさかあんなはっきりと断ってくれるとは夢にも思わなくて。

僕は繋いだ手をぎゅって強く握った。

「当たり前だろう?渚は俺の恋人なんだから。」

よしよしと頭を撫でられて、僕はへにゃっと笑った。

早くクッキーを渡したいな。

きっと喜んでもらえる。

でもその前に家に着いたら貴仁さんに抱きついちゃおう。

そうだ。

明日から指輪をつけて学校に行ってみよう。

だって僕は貴仁さんの恋人なんだもん。


++END++
あれ?渚ちゃんが思ったより強気だ…。本当はもっと駄目な方に考える子なのにな。
まぁ、今回はバレンタインと言うことで甘々で。


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あきゅろす。
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