[携帯モード] [URL送信]

企画
お誘い(現パロ沖田おとなりさん)

総悟の友達が勤めている大きい会社が、日本のお祭り(とはいっても町内会とかそんな規模)に興味がある取引先と次に仕事をするらしく、
親交を深める為に、祭りの雰囲気を味わってもらおうと会社の敷地内に屋台やなんかを設置して、
お祭りもどきの催しものをするそうだ。
自社製品をさりげなくアピールする為、普通によその祭りに連れて行くのではなく、全て自分達でやろうと企画したのだそうだ。
社員の家族、関連会社も人たちも呼んで結構盛大にやるらしい。

「名前、俺と一緒にいきやせん?」
「私、その会社の関係者じゃないけど大丈夫なの?」
「俺も招待されてる側ですが、連れと一緒でもOKっつーことなんで安心しなせぇ」
「でも、それって総悟の会社の人もたくさんくるってことだよね?」
「そーでしょーねィ」

アジのフライにソースをたっぷりかけながら、うまそー、と総悟が笑う。
そんな総悟の正面に座る私は、どうしようもなく笑顔を引きつらせてしまっていた。
だって総悟と一緒に行くって事は、総悟の会社の人に私が彼女だってわかってしまうということだ。
別に隠れなきゃいけないような後ろ暗いことはないのだけれど、
その、私なんかが総悟と並んでて変に思われないかが心配で、

「ダイエットして美容室行って服買ってエステ行って発声練習してネイルサロン行って……」
「んな暇ねーよ。祭りは明日の夜だ」
「ええっ!?」

どうしてこんな急なの!?
手に持っていた箸をテーブルに置く。青くなった私に、総悟が小さく溜息を吐いた。
空気が重くなった気がして心臓がずくりと痛む。

「行きたくねーってんなら無理にとは言いやせんが」
「そんなことない、楽しみだよ」

どうしよう、総悟呆れたかな。
せっかく誘ってもらったのに、嬉しそうな顔ひとつも見せない私のこと、嫌になったりしたかな。
総悟の顔からはいつの間にか笑顔が消えていた。
誘うんじゃなかったなんて、思ってたらどうしよう。

「総悟はお祭りの屋台で何が好きだった?」

明るく問いかけてみる。総悟はそんな私に何か言いたげな視線を向け「食いモンかな」と短くこたえた。
綺麗な茶色の髪が、彼の瞳を見えにくくする。
美しい頬の曲線を視線で辿っていくと、唇の端に茶色いソースがほんの少しついてるのが見えた。
それを赤い舌がぺろりと拭う。
ぞくっとする。舐めたのはソースなのに、別のものを舐めたみたい。艶かしさの中に残酷さすら感じられて。
まるで、唇を掠めた血しぶき舐めてるみたい、だなんて。なんでそんなこと思うんだろう。
総悟の顔の作りはどこか、この世のものではない妖艶さがあって、
でも笑うとすごく身近に感じられて、時々私は眩暈がしてしまうくらいこの人に見惚れてしまう。
ご飯をかきこんでるだけでも目を奪われるくらい、総悟はかっこいい。
さぞかし会社の女性にも人気があるに違いない。
でも総悟はそのことを嬉しいとか、楽しいと思うタイプではないと思う。

「たこ焼きに、焼きそば、わたあめは絶対に食べたいな」
「イカ焼きもあるらしいですぜ」
「そういえば私、イカ焼きって見かけることはあるけど食べたことは無いかも」

総悟がアジフライから視線を上げて私をふんわり見つめてくれる。

「一緒に食いやしょう。俺もそう食ったことねぇんで」
「うん!」

総悟が笑う。そして静かに微笑んだまま箸を置いた。
膝をついて小さなテーブルの向かい側に座る私に近寄り、頬に手を滑らせてキスをくれる。
食事中なのに。いきなりふんわりソースの香りがする口付け。

「俺ァこんな顔してっから、嫌でも女が寄ってくる」
「……うん」
「けど俺が惚れてるのは名前だけだ。だから外野がピーチクパーチク鬱陶しいことほざこうが堂々としてりゃいいんでィ」

わかったか、と総悟に頬を噛まれる。続いて鼻も噛まれた。
なのに唇にだけはとびきり優しいキスをくれて、なんだか涙が出てしまう。
悲しいんじゃなくて、総悟の気持ちが嬉しくて。

「やっぱモテるんだね、総悟」
「俺の女は超かわいいっつって毎日言うようにしたら随分大人しくなってきたんですがね」
「や、やだ! そんなこと言ってるの!?」
「ホントのこと言って何が悪いんでい」
「うあああ、明日がこわい。いやでも総悟と行くのは楽しみなんだけど、でも皆さんの視線が!」
「今の内だけだろィ。俺達が結婚したら騒ぎもだいぶ静かにならァ」
「!!?!!?」

色々と、総悟の発言に大混乱する私を、総悟がその胸にぐっと抱き寄せてくる。
総悟の胸からはどくんどくんと強い鼓動が聞こえてきた。

「あー、あした、よろしく頼みまさァ」
「……ぁ……はい……こちらこそ……」

よく見ると、総悟は首元まで真っ赤になっていた。
私達、きっと今何か話したら色々と爆発してしまうに違いない。
なんだかもう、下手なこと言えなくて、心臓がバクバクで、息苦しいのに幸せで、
動けなくなった私達は、しばらくの間お互いの身体をぎゅっとぎゅっと抱きしめあうのだった。





□沖田さんの「おとなりさんシリーズ」の設定で秋のお祭りのお話

まき様リクエストで書かせていただきました!
秋でも祭り自体の話でもなくてすみません…!!
お祭りで、現パロ銀さんカップルにあって、起きたs何の同僚にちょっと言われて沖田さんがかばって、
みたいな話まで考えたのですが、
そこまで行くのに庭分くらいかかりそうだったので、
いつか機会があれば続きを書かせていただきたいと想います…!
リクエスト、どうもありがとうございました!

2017/06/29 いがぐり

[*前へ][次へ#]

27/34ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!