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企画
背中に甘える(現パロ坂田)

今日、家に銀時がきてくれてよかった。

洗面所でドライヤーで髪を乾かしてから部屋へ戻ると、銀時が背中を向けたまま顔だけくるりと斜め後ろに回し「おけーり」と私に笑いかけてくれる。
寒くないのだろうか、私はもう長袖のパジャマを着てるというのに、銀時は半袖のTシャツに下はスウェットパンツという格好で、
のんびりとテレビを見ながら寛いでいた。

「寒くないの? 長袖着たらいいのに」
「風呂入ったばっかでまだ暑ィし」
「風邪ひかないでよ」
「そんなヤワじゃねぇよ。つーかどしたの名前さん、何か浮かない顔してね?」
「そうかな」
「体調悪いとかじゃなさげだけど」
「元気。食欲もあるし、どこもだるくない」
「何かあったら言えよ」

そう言って、銀時は目を細めて笑むだけでそれ以上聞こうとしなかった。
私は立ったまま少し考えた後、銀時の横には行かず、その背後に膝を落とす。
銀時はそんな私の行動に、首を微かに動かし少し不思議そうな顔をしながらも穏やかな横目で私を見る。
かたい両肩に手を置くと、銀時は口元に微笑みを浮かべ再び視線をテレビに戻した。
そんな銀時のひとつひとつの動きに胸をときめかせながら、私は目の前にある無防備な銀時の首の付け根辺りに唇を落とす。
あったかい。お風呂の余熱がまだ体内に残っているような。そのぬくもりに心からほっとした。
がっしりとした銀時の身体、その脇の下に腕を回し、銀時の背中にぴったりとくっつくように覆いかぶさってみる。

「なになに、今日はどうしちゃったわけ?」
「んー」
「甘えてぇの?」
「ん」
「名前さん家のシャンプーのにおい、俺好きだわ」

銀時の耳の下に唇を当てる。お風呂上りのしっとりとした肌。間近に感じる熱。
床についていた銀時の片手が動き、ぽんと無造作に私の頭に銀時の手のひらが乗せられた。



理由無く、落ち込むことがたまにある。
仕事は順調。銀時とも仲良くやってる。人間関係も悪くない。
なのに、なんでもないことでいつの間にか溜め込んでいた、見ないようにしていた日々の微かなストレスの種が、
いつの間にか気がつかない内に膨大に膨れ上がってしまっていて、
上手く対処できず呆然としてしまうことがあるのだ。

その種は、ひとつひとつが取るに足らないくだらないことばかりだから、それで落ち込むことはないのだけれど、
それがまとまって、せーので一気に圧し掛かってくる感じなので苦しい。気分がどんよりとしてしまう。
月経に絡む身体と心の浮き沈みの関係もあるかもしれない。
いつも数日も経てば気にならなくなるから放置しているのだが、今日は違う。銀時がいる。
銀時の背中に身体を預け、ただ目を閉じるだけで気持ちが軽くなっていくのがわかる。不思議だ。

「俺の膝こいよ」
「んーん、まだもうちょっと背中貸して」
「わーった。お好きなだけどーぞ、お嬢様」

ふ、と銀時の笑う振動が心地よい。
広い背中は大きな海のように、私の説明できない重苦しい感情を黙って受け入れ包み込み、癒してくれる。

会社で銀時を見かけると、立ってるだけで様になる背格好のせいか、その背中を視線で追いかける女子社員も割りと居たりする。
恋愛感情が絡んでいるのかはわからないが、銀時の背中には吸い寄せられるような雰囲気があるから、思わず見つめてしまう気持ちはよくわかる。

おおらかで、がっしりとして、優しい。銀時はそんな背中を持っていた。

銀時の首筋に顔を埋めるような格好で呼吸を繰り返す。このまま眠ってしまいたいくらい幸せな気持ち。
そんな私の頭を、銀時の手のひらがずっと撫で続けてくれていた。




□現パロ銀さん。家にて。落ち込む事があって、坂田さんを後ろから抱き締めて甘えるヒロイン。
 坂田さんが何があったか聞いても「んー」しか言わないからそれ以上は何も聞かずに
 テレビ見てるか仕事してるかしながらヒロインの頭をずっと撫でて慰める。

伽椰子さまリクエストで書かせていただきました〜!
珍しくエロくもなくチューもしていない現パロ銀さんですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
とても素敵なリクエスト、どうもありがとうございました!

2015/10/25
いがぐり

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