silent child
7
僕は頑張って、声を出そうとした。必死に、必死に。
事情を説明しないと……、謝らないと……、あっ君には許してもらえない。そう分かっていたから。
それなのに――、声が出ないんだ。
ただ、顔を真っ赤にすることしか出来なかったんだ。
口を薄っすらと開けて、息だけが荒くなっていく僕。
僕のことをバカと連呼して大泣きするあっ君。
あっ君を慰めようと必死な大和。
横たわったままピクリとも動かないピーちゃん。
凄く……、泣きたくなった。でも……、僕は人前では泣くことが出来ない。
たとえ泣けたとしても……、泣いちゃダメだと思った。
だって――、僕はちっとも可哀相じゃないから。
可哀相なのはピーちゃん。
もっと可哀相なのはあっ君。
もっともっと可哀相なのは、間に挟まれちゃった大和。
僕はそこから走り去った。
ピーちゃんを……、あっ君を……、そして、大和をそのままにして。
僕が居なくなれば……、あっ君は泣き止むと思った。あっ君の気が収まるかと思った。
喋ることの出来ない僕には……、それくらいしか出来なかった。それが僕の精一杯。
国道まで走って引き返して、いつも僕が歩く道を一人で歩く。
ブーブーと車が沢山走る国道の端を真っ直ぐ進む。
そこまで来て……、僕は漸く泣いた。
そこまで来て……、僕は漸く喋った。
「ごめんなさい。」
車が立てる音よりも小さな声で、何度も呟いた。
周りに人の居ないここなら……、車の音で煩いここなら……、こんなに簡単に喋ることが出来るのに。たったの6文字なんて簡単に声に出せるのに。
だけど――、それじゃぁ意味がないって知ってた。
あっ君の前で言う6文字に意味があるって知ってた。
分かっているのに出来ない自分が悔しくて……、ピーちゃんに、あっ君に、大和が可哀相で……、お家に着くまでずっと、泣きながら6文字を繰り返した。
お家に着けば、お母さんが居た。
「おかえりなさい。今日も学校楽しかった?」
「……うん。……楽しかった。」
(違う! 悲しかった!)
僕は笑顔で答えた。
「そろそろ、お友達沢山出来たんじゃない?」
「今日も……新しい友達出来た。」
(違う! やっぱり友達作りは無理だった!)
僕はまた笑顔で答えた。
僕の部屋に着いて直ぐ、ランドセルを放り投げて、布団に包まって、ただ……泣いた。6文字をずっと……、ずっと……、繰り返しながら……。
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