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silent child


 国道を渡れば、そこから続く先は僕の知らない道。
 きっと、大和とあっ君にとっては、二人で一緒に帰る慣れた道。

 その道は割りと大きい道路だった。
 歩道と車道の境には、木が生えている。名前は知らないけど、僕達の胸くらいの高さで、ピンクや赤のお花をつけている木。

 それをぼぅっと見ながら、僕は歩いていた。

「ここだ!」
 あっ君が突然そう言って、足を止める。
 二人は、しゃがんで何かをし始めるんだけど、僕には分からなくて、それを黙って見つめていた。

 暫くして、二人がお花を集めていることに気付いたんだ。僕も手伝おうと思って、その辺を探し出す。

(これ……、綺麗に咲いてる)
  蕾でもなく、枯れかけでもなく、綺麗なお花を見つけ、僕は急いで手折ってあっ君に渡した。

「有難う! 憲太君!」
 あっ君は凄く綺麗な笑顔を僕に向け、僕の手からお花を受け取った。
 それが僕には凄く嬉しくて……、あっ君の笑顔をもっと見たくて……、僕は夢中で綺麗なお花を探し始めた。

 僕の目には、お花しか映っていなかった。

(あった! さっきのよりももっと綺麗なの!)
 沢山の花びらをつけ、大きく膨らみ、綺麗に色づいたそのお花が、完璧に見えた。
 僕はあっ君の笑顔を思い浮かべて少しにやけながら、それに手を伸ばし、さっきと同様にパキンと手折る。

 それを手の平に乗せ、あっ君の方を振り返れば――、あっ君は僕の方を、今にも泣き出しそうな顔で見つめていた。
(あっ君……?)

「ダメーーッ!!」
 あっ君は叫びながら僕を突き飛ばす。僕は無様に尻餅を着いて、漸く意味を理解した。
 低くなった僕の視界には、さっきは映らなかったものが映っていた。

 木の下にそっと置かれた小鳥。

 そして、その周りに置かれた枯れかけのお花。僕がさっきまで夢中に探してたお花が、小鳥を囲んでいた。

「それ……っ、ピーちゃんのお花だったのにっ!」
(ピーちゃんのことなんて知らなかった)

「ちょうどっ、ピーちゃんの真上に咲いてたのに……っ!」
(お花しか目に映らなかったんだ……)

「だから……っ、神様がっ、可哀相なピーちゃんのために……っ、咲かせたお花だって……っ、そう思って……っ、そのままにしておいたのに……っ!」
(何のためにお花を集めてるかさえ、知らなかったんだ……)

「うえーーーんっ、えぇーーーん! 憲太君のバカァーーっ! えぇーーーんっ!」
 あっ君は大声で泣き出しちゃった。

 あっ君に言い訳したかった。でも――、僕には喋ることが出来なかった。
 あっ君に謝らなきゃって思った。だけど――、たったの6文字さえ音にならなかった。

 たったの6文字なのに……、僕はどうして言えないの?


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