silent child 12 大和はお兄さんに色々と説明してもらってから、試し弾きを始める。 この間の僕が座ったのと同じ椅子に座って、この間の僕みたいに興奮している。 なんだかんだで、長年一緒に過ごした僕達は、感性が似ていたりする。 大和がハマることは、だいたい僕もハマるし、もちろんその逆も然り。 音楽に関しては、趣味が合わないんだなって思っていたけど……、結局やっぱり合うんだって気付いた。 ――僕も大和のように……、笑って弾いていたのかな? そう思ったら、また顔に熱が集まってきた。 「どれにするか決めた?決まってないなら、色々と見て待っててな?」 お兄さんにそう言われたけど、僕はとっくに決めていた。 初めて弾いたメタリックレッドのギター。 アイツにするって、とっくに決めていた。 大和が選んだのは、メタリックブルーのベースだった。 アンプに、シールドに、ピックに、ケースに……、必要な物を大よそ揃えて纏め買いした。 中学生の僕らは、車なんて持っているわけがないから、自転車でギターを担いで帰る。 「重いーー!大和速すぎーー!」 「ちょーフラフラするしぃーー!憲太こけんなよー?」 テンションの上がっている僕等は、笑いながら、ふざけながら、ふらふらよろけながらペダルを漕いだ。 ギターケースを担いでいる僕等は、知らない人達から見れば、少しくらいは、本物のバンドマンっぽく見えていたかもしれない。 そう思うと、なんだか胸が踊った。 僕の部屋に初めてコイツが入った日から、コイツは僕の相棒。 僕の喉に突っかかったまま、吐き出すことの出来なかった言葉をコイツにぶつける。 嬉しかった時。 ムカついた時。 悔しかった時。 悲しかった時。 声の出せない僕に代わって、コイツを思いっきり叫ばせる。 ――叫べ! 叫べ! もっと叫べ! ヘッドホン越しに聞こえる爆音に、僕の心臓はズドンズドンと揺れる。 思いっきり弦を弾いて、思いっきりコイツを叫ばせた後、ヘッドホンを外せば……、僕の心は、いつもすっきりと晴れている。 自分の口から音を出せない僕の相棒は、弾けば簡単に音の出せるコイツ。 コイツは僕の――“心の代弁者”。 [*前へ] [戻る] |