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silent child
17

 1曲目から順調で、観客のノリも凄く良かった。僕達のことを知らない人達も多いのに、恵まれた環境でやりやすかった。

 MCを挟んで2曲目は、クリスマスにちなんだ曲。有名なロックバンドの、ちょっと泣けてくるような、哀愁の漂うバラード。本当は、バラードは最後にやった方が良いのかもしれないけど、最後にやる曲は譲れない。
 しんみりとした曲だけど……、それでも楽しんでもらえたようで、演奏後は拍手と歓声をもらえた。

 2曲目が終わったところで、既に汗が流れ落ちてきた。
 観客の熱気と、ライトの熱と、体を動かすことで生じる熱で、今が冬ってことを忘れそうなくらい熱い。


『次の曲で、終にラストっ!!』
えぇーーーーっ!!ヤダーーーーッ!!
 もしかしたらノリで言ってるだけかもしれにけど……、そう言ってもらえると、素直に嬉しい。

『有難うっ!! だけど、次の曲はきっと今まで以上に楽しんでもらえるはずっ!! なぁーーんと、noisy boysの初オリジナル曲を披露しちゃいまーーすっ!!』
ワァーーーーッ!! キャーーーーッ!!
 1組目のバンドがやった曲と、僕達が今やった2曲はコピー。観客にとっても、今日初めてのオリジナル。
 僕達のファンだけでなく、初回の人達も盛り上がってくれている。

『この曲は、兄ちゃん達に作曲の仕方を教わって、noisy boysの皆で作ったんだっ! 作詞はしたのはメンバーの一人!意外や意外、マジ驚くことに、ケンタなんだっ!!』
「「えーっ?!」」
「「嘘っ?!」」
 ファンの皆は、毎回のライブで、僕が喋らないことを知っている。
 極少数だけど、中には「noisy boysの中に、silent boyが居る」なんて嫌味を言う人も居たりして……。「ダンマリ」だと思っていた僕が、作詞をしたなんて知って、本当に驚いただろうと思う。

 ちらっとカレンを見れば、カレンも驚いていた。実はカレンを驚かそうと思って、内緒にしてたんだ。
(この曲を聴いて、カレンはどう思うだろう)

『知っている人も居ると思うけど、ケンタは実は、人前で喋ることが出来ないんだ。
 だけどその分、俺等と違った感受性を持っているんだと思う。喋れないからこそ、言葉にかける想いは誰よりも強い。俺等にとって、言葉なんて何気なく使っているものだけど、ケンタにとっては違うんだよなって思わされた。
 この曲で、言葉の大切さを皆にも感じてもらえたらって思います!オリジナル曲“言の葉紡ぎ”、聴いて下さいっ!!』

(マサキ……、有難う)
 マサキの言葉が、僕には嬉しかった。


カンカンカンカン
(始まった……)

 聞こえるのは――、僕の音、ダイキの音、大和の音。
 そしてマサキの声が加わり――、noisy boysの音となる。


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