silent child
15
その後、直ぐにリハが始まった。
(いつもと違うから、少し緊張する)
今回出演するバンドは全部で5組で、僕達は2番目。1バンドの持ち時間は30分あって、次のバンドは裏で待機しておくことになっている。
順番はじゃんけんで決めたから、どこが人気あるとかそういうのもよく分からない。マサキが観客席を覗いた時、1/5くらいが僕達のファンだったって言ってたから、どこもどっこいかもしれない。
僕もちらっと覗いてみたら、カレンが前列を陣取っていた。やっぱり女の子って逞しいなと思う。
*****
『次の曲でラストになります!!』
えぇーーーーっ!! ヤダァーーーーッ!!
1組目からして凄い盛り上がり。観客の食いつきがめちゃくちゃ良くて、この次にやると思うとプレッシャーを感じる。
(久しぶりに、凄く緊張してきた)
「ヤーバイ盛り上がってんぜっ?! 俺等も負けてらんないなっ! 今のうちにアレやっとこうぜっ!!」
マサキはいつものように、手を前に差し出す。いつの間にか、二の腕のところにトナカイのぬいぐるみがくっついていた。
「おうっ!! もっと盛り上げてやろうぜっ!!」
大和も手を出し、マサキに重ねる。
「ハズイ奴等。」
ダイキも手を重ねた。
(よしっ! 頑張ろう!)
僕も、皆の上に手を重ねた。
「騒いで騒いで騒ぎまくれっ!! noisy boys、行くぞぉーー!!」
「「「「おぉーーっ!!」」」」
円陣組んで、皆で気合を入れると、毎回勇気が沸くから不思議。
『有難うございましたっ!!』
ワァーーーー!!
前のバンドが、僕達が居るのとは逆の裾にはけて行くのが見えた。
(始まる……)
僕達は、それぞれの相棒を掴みあげる。
今日、僕がメインで使うピックは、がんばれのピック。右手に確りと握り締める。
観客の歓声が次第に止んでくる。
(もう直ぐ、始まる……)
『次は、noisy boysの皆さんですっ!! 宜しくお願いしますっ!!』
ワァーーーー!!
(始まった……)
仲間と一緒に、照明の落ちた薄暗いステージへと進む。
そして、立ち居地に着いた瞬間――、一斉にライトを浴びせられた。
キァーーーーッ!!
「「「マサキくぅーーんっ!!」」」
「「「ヤマトくーーんっ!!」」」
「「「ダイキーーッ!!」」」
姿が見えたと同時に名前を叫ばれる3人。マサキはピースで返して、大和は軽く手を振る。ダイキは無反応だけど。
「ケンタ君っ!」
色々な音に混じって、小さいけれど可愛らしい声が確かに聞こえた。顔を見なくても分かる。聞き慣れたこの声は――、カレン。
ステージの上は――、相変わらず熱かった。
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