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silent child
21
――違う! 違う! 違う!!
(おホモダチなんかじゃっ、ないっ!)

「あぁ、そっか。実は、お前が女なんだろ?」
――違う! 違う! 違う!!
(僕は女なんかじゃっ、ないっ!)
 手に、目に、喉に……、力を入れすぎて痛くなる。呼吸がし辛くなって、苦しくなる。

「何も言わねぇってことは、そうだってことか?そんな顔して、おっぱいとか、くっついてんじゃねぇの?」
――違う! 違う! 違う!!
(僕にはおっぱいなんてっ、ないっ!)
 目の奥が熱い。喉が熱い。頬が熱い。胸が……、熱い。
 熱が体の中を暴れまわって、飛び出てしまいそうで……、とにかく石川君を睨みつけた。

「否定しねぇってことは、くっついてんだ。俺に見せてみろや?俺が確認してやるぜ。」
――違う! 違う! 違う!!
(おっぱいなんてっ、くっついてないっ!)
 石川君は勝手に僕のシャツを胸までたくし上げた。そして、僕がムカつくって分かっていて、わざとじっくり観察している。
(悔しいっ、悔しいっ!)

「なんだよてめぇ、ついてねぇし。でも女なんだもんなぁ? おっぱいが感じるんだよなぁ?」
――違う! 違う! 違う!!
(おっぱいなんてっ、感じないっ!)
 石川君は勝手に僕の胸を触り出した。そして、僕がムカつくって分かっていて、わざとイヤラシイ手つきで撫で回してくる。
(ムカつくっ! ムカつくっ!)

「なんだよてめぇ、感じねぇし。でも女なんだもんなぁ? 下にはアレが生えてねぇんよなぁ?つるつるなんだよなぁ?」
――違う! 違う! 違う!!
(アレが生えてないわけっ、ないっ!)
(ツルツルなんかじゃっ、ないっ!)
 石川君は、僕のズボンに手をかけ、ずり下ろそうとしてくる。

 そこまできて漸く、ダランと垂れ下がっていた僕の手は動き出す。必死にズボンを下げられないように、ぎゅっと掴む。
 そこまできて漸く、固まっていた僕の体は動き出す。必死に石川君の手を拒もうと、体を揺する。
(ムカつくっ! ムカつくっ! ムカつくっ!!)

ダンッ!!
「ち……っ。てめぇ、何だよ急に。てめぇは何も言わなかったじゃねぇか!何も否定しなかったじゃねぇか!」
 また壁に強く押さえつけられた。
 後頭部をぶつけた。背中をぶつけた。
(痛いっ!! それにムカつくっ!!)

「お前は女なんだろっ?! 下にはアレが生えてないんだろっ?! つるつるなんだろっ?!
 お前が言わねぇんならっ、直接確認するっきゃねぇよなぁ?!」
――違う! 違う! 違う!!
 石川君は、また僕のズボンに手をかけた。石川君が本気を出せば、僕の力でなんか敵いっこない。
 腰から半分くらいずらされたところで……、僕は真っ赤になった。
 顔だけじゃなくて……、頭の中が、目の前が……、僕の全てが――、真っ赤になった。


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あきゅろす。
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