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silent child

「うちのとこ、色々な音楽教室あるだろ? それぞれの教室から各パート集めてな、バンド組んで、ライブハウスでライブやるんだよ。練習の成果を発表する場としてな。折角だし……、二人とも出てみない?」

「へぇー、カッコいいね!それに面白そう!」
(僕もそう思う……)

 そりゃぁもちろん、ギターを始めたからにはバンドを組みたい。バンドを組んでみたとしたら、その次にはライブをやってみたい。
 出るとしたら……、初めてのバンドに、初めてのライブ、夢がどんどん叶っていく。
 そんなの……、やってみたいに決まってる。きっと大和も同じ。

「憲太、どうする?」
 大和は、僕の気持ちを探るように、じっと目を見つめてくる。

――やりたい。

 だけど――、僕に本当に出来るのかって問われたら……。

 ライブとなると、沢山の視線が僕に突き刺さる。視線を浴びると顔も上げられない僕。
 それなのに――、僕はステージに立って、手を動かすことなんて出来るの?僕の音を出すことなんて出来るの?

――自信がない。

「先生、俺達まだ始めたばっかりだしさ。決めるのは、もうちょい考えてみてからにするよ!」
 大和は笑顔で答えた。

 もう少し考えたいっていうのは、本当は僕の気持ち。

 大和は、いつも僕の気持ちを悟って答えてくれる。いつも僕に合わせてくれる。
 そんな大和が大好き。
 だけど――、同時に凄く……、申し訳なかった。だって……、大和は出たいに決まっているから。


*****



 大嫌いな英語の授業――。今は、大嫌いな矢口先生の英語の授業中。

 座席順に当てられ、英単語の意味を次々と答えていく皆。

(どうしよう……)
 回ってくる。
 僕の番が……、回ってくる。

「次、高木憲太。」
 こんな問題簡単。間違えてるも合ってるもないんだから。辞書通りに答えればいいんだから。
 なのに――、声が出ない。

「もう7月だぞ? いつまでそのままでいるつもりだ。」
(僕だって、変わりたいよ!)
 皆の視線がグサグサと刺さり、僕の頭はどんどん下がっていく。僕の顔はどんどん赤くなっていく。

「早く答えなさい。」
(出来るならとっくにやってるよ!)

 矢口先生は、いつも僕が反応を返すまで動いてくれない。
 それが分かっているから、僕の精一杯で、頭を若干左右に振った。僕に辛うじて表現出来るのは、「はい」か「いいえ」か「わかりません」。

「単語の意味だぞ? 分からないわけないだろ。」
(だって、僕には三つしか表現できない!)

「わざと簡単に答えられる質問にしてやったんだ。答えなさい。」
(わざと三つで答えられない質問にしたくせに!)


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