silent child
12
大和はお兄さんに色々と説明してもらってから、試し弾きを始める。
この間の僕が座ったのと同じ椅子に座って、この間の僕みたいに興奮している。
なんだかんだで、長年一緒に過ごした僕達は、感性が似ていたりする。
大和がハマることは、だいたい僕もハマるし、もちろんその逆も然り。
音楽に関しては、趣味が合わないんだなって思っていたけど……、結局やっぱり合うんだって気付いた。
――僕も大和のように……、笑って弾いていたのかな?
そう思ったら、また顔に熱が集まってきた。
「どれにするか決めた?決まってないなら、色々と見て待っててな?」
お兄さんにそう言われたけど、僕はとっくに決めていた。
初めて弾いたメタリックレッドのギター。
アイツにするって、とっくに決めていた。
大和が選んだのは、メタリックブルーのベースだった。
アンプに、シールドに、ピックに、ケースに……、必要な物を大よそ揃えて纏め買いした。
中学生の僕らは、車なんて持っているわけがないから、自転車でギターを担いで帰る。
「重いーー!大和速すぎーー!」
「ちょーフラフラするしぃーー!憲太こけんなよー?」
テンションの上がっている僕等は、笑いながら、ふざけながら、ふらふらよろけながらペダルを漕いだ。
ギターケースを担いでいる僕等は、知らない人達から見れば、少しくらいは、本物のバンドマンっぽく見えていたかもしれない。
そう思うと、なんだか胸が踊った。
*****
僕の部屋に初めてコイツが入った日から、コイツは僕の相棒。
僕の喉に突っかかったまま、吐き出すことの出来なかった言葉をコイツにぶつける。
嬉しかった時。
ムカついた時。
悔しかった時。
悲しかった時。
声の出せない僕に代わって、コイツを思いっきり叫ばせる。
――叫べ! 叫べ! もっと叫べ!
ヘッドホン越しに聞こえる爆音に、僕の心臓はズドンズドンと揺れる。
思いっきり弦を弾いて、思いっきりコイツを叫ばせた後、ヘッドホンを外せば……、僕の心は、いつもすっきりと晴れている。
自分の口から音を出せない僕の相棒は、弾けば簡単に音の出せるコイツ。
コイツは僕の――“心の代弁者”。
第1話 --完--
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