silent child 5 今でも忘れることの出来ない思い出がある。 “あっ君とピーちゃん”……、下手に仲良くなろうとして失敗した思い出。 あれは小学校2年の時だった――。 僕のクラスは大和のクラスより早く終わっちゃった。だから、廊下の前で大和を待つ。 「先生、みなさん、さようなら。」 「「「さようならーー。」」」 大和のクラスも終わったみたいで、次々とみんなが出てくる。 (いた! 大和だ!) 「大和! 一緒に帰ろう!」 見つけた瞬間、大和に駆け寄って誘いをかける。僕と大和の家は隣同士。だからほとんど毎日一緒に帰るんだ。 「わりぃー、憲太。今日もクラブなんだぁ。」 「えぇーー! またぁーー!」 最近大和はサッカークラブに入った。そのままクラブへと直行する大和とは別ルートになってしまう。 断られるのが続けて三回目になる僕は、なんとなく引き下がるのが嫌だった。 だから僕は、大和の腕に自分の腕を無理やり組んでこう言った。 「じゃぁ、僕が遠回りして帰るから、一緒に帰ろう! ね!」 「でもなぁ。なんだか悪いじゃん。また今度一緒に帰ろうぜ?」 「ヤダ! 絶対一緒に帰る!」 大和は渋っていたけれど、僕はどうしても一緒に帰りたかった。 「分かったよ。一緒に帰ろう。」 結局、大和は笑顔でそう言って、僕のわがままを許してくれた。そんな優しい大和が僕は大好きなんだ。 (久しぶりに大和と二人で帰れる!) (嬉しいなぁ、何を話そうかなぁ) そう考えていたら――、 「大和君、早くクラブ行こうよ!」 僕と同じくらいの身長の子が、僕が組んでいない方の大和の腕を、掴んで言った。 「あっ! あっ君。 今日、コイツも一緒だけどイイ?」 (えっ、その子も一緒なの? 嫌だなぁー) 一瞬、そう思っちゃった。だけど――、 「うん! もちろんイイよ!」 あっ君が迷わず笑顔で返事をしたのを見て、ちょっと反省した。 きっとあっ君はイイ子なんだな。もしかしたら、仲良くなれるかもしれない。 そんな期待を胸に抱いて、3人で校門を潜った。 真ん中はもちろん大和。右腕は僕と組んで、左腕はあっ君と組んでいる。 歩道一杯に広がって歩く僕達は迷惑かもしれないけど、僕は腕を外したくない。きっと、あっ君も同じ。 人見知りの僕は、ちっとも話せない。 だから、大和とあっ君が仲良く話すのを聞いていた。 そんな僕に気を使って、あっ君は頻繁に僕に話しを振ってくれる。 ――凄くイイ子。本当に仲良くなれそう。 喋れない僕は、顔の動きだけで必死に反応を返しながら、そう思った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |