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沈みゆく

あいしてると言えば言うほど

泥沼にはまっていくようで




「アリス」




アリスアリスアリス。

呼ぶ。壊れて狂った蓄音機の様に繰り返し。

彼女の名前を呼びながら止まってしまうならそれでもいいかもしれない。




「そんなに呼ばなくても聞こえてるわ」




さも嫌そうに眉をしかめる彼女。

だって呼びたいんです、と返せば更に歪む顔。




「…あんた、前々から気持ち悪いとは思ってたけどやっぱり気持ち悪いわね」




相変わらず彼女は毒舌だ。

それでも彼女が自分に向けてくれる全てが愛しくて、その全てを零さない様にするのに必死で。




「アリス」

「何よ」

「大好きです」




何より誰よりどんな事より。

伝えたくて、この溢れて止まらない暖かいものをひとつのこらず。


僕は、あなたが


伝えても伝えても足りないのに、彼女はいつも悲しそうな顔をする。

暖かいものが彼女の中で冷たいものになっているかのよう。




「すきです、だいすきです」




痛い顔をする彼女。

それでも構わない。

きっと暖かいものでいっぱいにすれば彼女は痛くなくなる。

そう、盲目的に信じ込む。




「アリス、アリス」




名前を呼んで彼女を腕に閉じこめた。









すきで、すきで

足下が崩れて沈んで溺れて身動きすら取れなくても



僕はあいしてると叫び続ける










e.

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