真白
「綺麗ね」
囁けばひくりひくり揺れ動くほわほわした白。
真綿を集めて雪色を閉じ込めたその耳。
白兎の名の通り真っ白なその容貌。
睫すら雪色にきらりと煌めく。
「アリス?」
困惑して揺れる赤い瞳はそれでも嬉しそうな色を宿してアリスを映した。
真っ白で真っ白で何より綺麗な。
「やっぱり違うわ」
「…何がです?」
「黒兎では、ないわね」
「っ当然です!僕はどこからどう見ても真っ白な兎じゃないですか!」
ひょこりと立つ耳に思わず笑みがこぼれる。
腹黒兎なんて呼ばれるこの兎は真っ白だ。
くすんだ部分すら無いのではないかという程。
外も中も全部が。
腹黒なんて言葉はこの兎の同僚にあたる騎士に余程お似合いだ。
「そうね、真っ白な兎だわ」
「そうでしょうそうでしょう、貴女はわかってくれますよね!」
「ええ、あなたは白兎よね」
アリス!ときらきら輝いた瞳ににっこりと笑う。
誰より真っ白で何より綺麗で純粋な、
「私の大好きな、うさぎさん」
赤い瞳がぽかんと呆ける。
けれど刹那白い頬がふつふつと真っ赤に染まっていき、ぐしゃり。
「っ…ぁああ、ア、リス!?」
崩壊。
ふふふ、と動揺する兎を見て微笑う。
可愛い、愛しい、そんな感情に落ちたものだと自分を嘲笑う。
「アリス、アリスアリスアリス!僕も大好きです!」
なにもかもが雪色をした男に抱きつかれ、その温もりに溺れ。
雪の中に沈み込む。
落ちるならば
何処までも
e.
+++
クロアリのペーターのイメージというか、白いなぁ、と。
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